春風冷たいお昼前。
今日はこれから友人らと美味しいランチ。
愛車のキー片手に庭へ出た。
そろそろ花が咲きそうだなと田舎故に広過ぎる庭を見渡す。
ふと、草むらが揺れた。

ガサガサ。

庭に住み着いてる野良猫の親子かしら?

ガサガサ。

猫にしては大きな音。
たまに出る猪?
それとも鹿?
遂に森の熊さんがお出まし?

ガサガサ、ガサ。

「ちっくしょ!んだぁ、ここは・・」

上から下まで真っ黒。
現代社会で銃刀法違反バッチリな、お犬様。

なるほど、犬が出たか。

なんて、冷静にもほどがあるよ私の脳ミソや。





 「 チェンジで 」 01 





江戸では近頃、神隠しなんて事件が流行っていた。
手が足りねえからと真選組からも何人か借り出され、俺はその捜査の真っ最中。

だった。

人の消える神隠しの森。
部下と探索していたはずが気付けば自分一人きり。
単純にアイツがサボりを決め込んだと思った俺は悪くねえはずだ(奴の日頃の行いが一番悪い)

あの野郎・・・!

腹立つままに進めていた足を引き返す。

ガサガサ。

自由に伸びきった高い草が行く手を阻む。
ぁあ?
こんないかにもな獣道なんざ、果たしてあっただろうか。
記憶にないだけか・・・悪ふざけの塊な部下に誘導されていたか(絶対に後者)

ガサガサ。

あああ!
面倒くせェェェ!
掻き分けても掻き分けても、進むのを拒むように草が立つ。

ガサガサ、ガサ。

「ちっくしょ!んだぁ、ここは・・」

こうなったら意地だとひた進む。
のが、いけなかったのか・・・?
ようやく切り開いた忌々しい草原の先。
真っ赤な車の前で、女が俺を見ていた(なんだこのあからさまに嫌そうな目は・・)