トンネルの先は不思議な世界でした。
なんて映画ならもちろん映画館と地上波の両方で観たけど、
目が覚めたら江戸時代の大富豪の一人娘でしたってどんだけムチャなドッキリだよ。
オタクだからそれなりに多方面からネタ引っ張るけど
分からなかったらそこだけスルーしちゃってね。
覚 醒 之巻
朝、学校なんか行きたくねーなんて思いながら重い瞼を開けて見れば、そこには涙目の美形君がいた。
萌えた。
だってこの人ハウルだよ。黒髪になったハウルがいるよ。
普通に格好良いのにプラス涙目なんて萌えるしかなくね?
つーか誰だこのハウル。
「坊ちゃまぁ・・・」
「ぁ?」
十八年ばかり生きてきて、「坊ちゃま」なんて呼ばれたのは、もちろん初めてでした。
全く狭さを感じさせない・・むしろ「広っっ!?」と内心でツッコミを入れてしまうほどに広い和室。
古さを感じさせる畳の匂いはナカナカに良いものだ。
時代劇でよく見るような、お代官様とかお殿様が座っていらっしゃられる上座の席。
上品な紫色の、肌触りも柔かさも完璧な座布団を下に敷いて、私は些か居心地悪く正座していた。
目の前には横一列に並び、あろうことか私に向けて土下座する形となっている数十人の男女。
「葵様、ご健康そうで何よりに御座います」
「「「何よりに御座います」」」
中央で土下座したままの男の声に続いて、左右に連なりやはり土下座したままの女性らが声を出す。
そしてゆっくりと、中央の男だけが顔を上げた。
彼はついさっきに『坊ちゃま』発言をした黒髪ハウルだ。
「宇宙へ仕事に出ていらっしゃられる旦那様も奥方様も、葵様のお目覚めを大層喜んでおいででした」
にっこり笑んだ黒髪ハウルの、理解できない言葉。
困惑した表情をそのままに、軽く頭を傾げて見せて一言。
「・・・・・宇宙?」
いつから私のバカ親は宇宙飛行士になったんだ・・!(それはそれで凄いけど!)
「・・・・・葵、様・・?」
きょとんとした顔もやはりハウルなだけあって格好良い。
ついでとばかりに、私はずっと頭の中にあった疑問を口にした。
「それで、えっと・・・・お兄さん、誰ですか?」
私の至って素朴な疑問を聞いた途端に、
あの感動した映画を思い出させる秀麗な顔が、見る見るうちに冒頭の泣き顔へと歪んでいった。
彼の灰の瞳から、ぽろぽろと綺麗な涙が頬を伝い流れていく。
「ぇ、ちょ・・「医者を・・!直ぐに医者を呼べえーッ!!」・・・ぇえー・・・?」
黒髪ハウルの悲痛な声に、何故か若干涙目になっている土下座したまま控えていた女性たちが慌しく動いた。
「そんなっ、なんてお可哀想な葵様・・!」
「早く江戸一番のお医者様をっ」
「やっとお目覚めになられましたのに・・きっと記憶が・・!」
口々に気になる言葉を残しながら、
私はあれよあれよと目覚めた見知らぬ高級羽毛布団の中へと押し遣られたのだった。