ここは地球だ。
青き星、我らの故郷。
天人に支配された星。

江戸の町からは侍が消え、異星人が闊歩する。
天人は肩で風きり胸を張り、地球人は背中を丸めて隅を歩く。

侍は最早、死んだ。

なんて、馬鹿みたい。
侍はまだ生きている。
少なくとも一人、私はこの地球に生きる本物の侍を知っていた。







オタクだからそれなりに多方面からネタ引っ張るけど
 分からなかったらそこだけスルーしちゃってね。
    学 習 之巻








何も覚えてない。とだけ言ったら、ずらずらと長い巻物を何本も何本も持ってこられた。
丁寧な解説付きで見せられた全てを理解するのはまだ無理だけど、最低限のことは分かったつもりだ。

私のこと、家のこと、この地球のこと。
私は三年間ほど原因不明のまま眠り続けていたらしい。
両親は宇宙へ仕事に出ている。
出稼ぎとかのレベルではなく、異星に会社をおっ建てての社長業。
地球にもデカイ会社が幾つも建っている。
つまり、大金持ち(ここで小さくガッツポーズしてしまったのは許して欲しい。私だって人間だもの)。
見せられた写真には確かに、自分の万年バカップルな両親が見慣れた笑顔で写っていた。
見知らぬ環境の中で親がきちんと存在している事実は、自然と私の肩の力を抜いてくれる。

「それで・・・・・社長?」

「はい!」

些かうんざりとした顔で問えば、素敵な笑顔でいい返事。
ここでの私の仕事は普通の高校生、ではなく・・・地球にある我が家の会社、全ての“社長”だった。



世界はモビルスーツを使った宇宙規模の戦いに激しさを増していた。
そして遂に僕の暮らしていたコロニーは破壊され、救出に来た軍の戦艦で世話になることに。
だがその軍艦までもが敵に襲われ、僕は今度こそダメだと思い死ぬ気でガンダムのコックピットに飛び乗った。
見慣れぬ操縦桿を握り締め、幾度も幾度も固く目を瞑り、必死に叫びながら宇宙を駆ける。
最後の敵のモビルスーツに赤く光るビームサーベルが突き刺さった時、僕は無線で艦長の言葉を聞いた。

『素晴らしい!君は今日から我が軍のエースパイロットだ。しっかりやってくれたまえ』

「ぇ・・・」

そんな言葉とともに与えられた、最新鋭のガンダム。

「そんな・・僕は戦争なんてっ」

『まぁまぁ、そんな固いこと言わずに、頑張ってよ』

戦争は、僕らのような子供ですら巻き込んでいく・・・。



無理だろ。
女子高生がいきなり「シャチョさん」とか、無理だろ。

「心配なされなくとも、葵様は大変慈悲深い素晴らしい社長です!」

一片の曇りもない笑顔を見せる彼
(紹介が遅れたが、この黒髪ハウルは“不知火”という小難しい名前で、
私は咄嗟に某格ゲーのチャイニーズグラマラス美女を思い浮かべてしまった。
ちなみに私の付き人さんらしい)
に言いたい。

それは間違いなく私じゃないから目を覚ませよ、と。

「地球人はもちろんのこと、生活に苦しむ善良な者であれば
天人であろうと一切差別せず、平等に仕事を与えておりました!」

ますます私じゃないってそんな善い人!
(僕みたいな一般ピープルにガンダムなんて操縦出来ません・・!)

「葵様は欠点など見当たらないような、完璧な方です」

主成分は“欠点”ですと断言してもいいよ・・。

(いやっ、ホントに無理ですって!ニュータイプならまだしもそんな・・・ん?
目指せ次世代のアムロ&カミーユ?
無茶言うなコラ。
つかここで初代と二代目ガンダムパイロットの名前なんか出しても分かる人いないだろが。
種とOO世代だぞコラ)


「社員の信頼厚い方で・・・ただ、一つだけ、どうしても困ったことが・・」

溶けそうなほどに褒めちぎっていた不知火が、ここで初めて言葉を濁らせた。

「その、女性とのお遊びが・・えと・・・少々ナンパ癖などがありまして・・」

ああ、それは間違いなく私だ。
(このガンダム・・・動くぞ!)
困ったように目を逸らす不知火につられて、私も気まずさに視線を畳へと落とした。
だってきっと、ここでも女の子との遊びは止められない。
(葵、行きまぁーす!!)