第一期 虫だって生きている
ユーキの髪を丁寧に慎重に切っていく。
失敗は許されない。
川から上がってきたユーキは文字通りさっぱりしていた。
シミは残っているものの、服にはもう血がない。
手足にも、顔にも。
それに、「罪悪感なんてない」と言いながら、どこか苦しそうだった表情。
さっぱりしていた。
自分なりに解決したのか・・
「なあ、ユーキ」
「んー?」
しつこいかもしれない。
こいつのこの様子じゃ杞憂だろう。
でも、気になるんだ。
平和で平凡で、争いも殺し合いもない世界。
そこから来たユーキ。
殺しを「覚悟してた」と言っても、そう簡単に割り切れるものか?
普通に生きていた、まだ二十にもならない女が。
「お前、本当に大丈夫なのか・・?」
俺は心配なんだよ。
こんなことでユーキの優しさが壊れちまうんじゃないかって。
明るい笑顔が消えちまうんじゃないかって。
「んー・・大丈夫だよ、ホントに」
「・・・そうか?」
「おーぅ」
声の調子はいつも通り。
だけどこいつの思考は時々、師匠の俺でも分からない。
だから不安だ。
納得していない俺の様子を察して、ユーキが溜息を吐く。
そして何てことないように、
「虫といっしょだよ」
「あ?虫?」
「家の中にまで入ってきた害虫を叩き潰すのといっしょ」
「・・・お前、それは」
違うだろ。
その思考にはじめて、ゾッとした。