第二期  不思議な依頼 finish!




パチンッ。
周りで食事や夜景を楽しむ人たちの談笑に紛れてくれるほどの音。
握られていた手を、オレが振り払う形で発生した音。

心臓が。
頭の芯が。
指先が。
体中、冷水を浴びたような冷たさに襲われた。

「・・・どうかした?」

手を振り払われたのに、気にした様子のない彼。
クスッと、悪戯っぽく笑う。
切れ長の甘い瞳が細く三日月を作る。
心臓が、血液が、自分の生きる音がやけに煩く聞こえた。
五感が研ぎ澄まされる感覚。
得体の知れない恐怖。
震えだしそうな手を叱咤する。
ひどく冷静な頭が唯一の救い、か。

「ねぇ、ダメ?」

愛らしささえ感じる小首を傾げる仕草。

あぁあああチクショウ!

この嘘吐きめ・・!!

きっと強張っていたであろう顔の筋肉を動かす。
感情も考えも分からないよう、元の当たり障りのない微笑に。
緊張で口内に溜まった唾を飲み込んで、

「ジャック、貴方・・・変化系でしょう」

確信を持って。
ジャックの笑みが深まった。
瞳の甘い色が変化する。

「やっぱり、イイね、君」

彼の笑顔が目に見えて変わる。
ニンマリとも、ニヤリとも表現し辛い笑み。
発された声すらどこか纏わりつくような重さを伴う。

甘さが消えた。

こっちが完璧に素の彼だと分かる。
良過ぎると思ったんだ。
この展開なんだよと思ったんだ。

手が。
声が。
目が。

変に頭の中の記憶とシンクロしてきていて。

まさか、と思っていた矢先。
見詰め合った瞳の奥、彼の隠しきれない狂気が見えた。

「イルミに紹介されてね、面白そうだから依頼してみたんだ★」

よろしくね◆なんてウインクつきの、語尾の記号がありありと脳内で踊る。

ごめんなさい。

ごめんなさい。

本当に、ごめんなさい。

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