バスの揺れる振動が心地よくて、自然と瞼が下がってきた。
コトンと軽く、窓に頭を預けて本格的に眠る体勢に入る。

脳が休むために夢の映像を流し始めた。
途端、大きく揺れたバスの反動で、頭を窓に強打し強制的に覚醒。

「っ?!」

え、今、頭ぶつけた?

咄嗟に周囲へ目を向ける。
乗客はどうやら自分だけで、今の失態は自分の中だけで消化すれば良さそうだった。

いまいち覚醒しきれていない頭。
その右側面から鈍い痛みをようやく感じて、一つ溜め息を吐く。

「痛い・・・」

本当は、たいして痛くなかったけど。










     S h a l l   w e   d a n c e ?  〜夢とダンスを〜   StEP,01










すっかり目が覚めてしまった。

通学鞄から携帯を取り出して、表示される時間を確認してもまだPM五時をまわったところ。
毎日乗り降りしている停留所は、渋滞にでも巻き込まれない限り六時半頃には到着する。
単純に計算して、一時間は暇だ。暇過ぎる。
携帯でも弄ろうかと思えば、いいタイミングでバッテリー切れ寸前。


仕方なしに外の流れる風景を見れば、そこは全く知らない世界だった。

「・・・・・え」

ど、何処だここっ?!

一瞬で頭の中が真っ白になる。
冷や汗が背中をつたった。

目の前に広がっているのはアリエナイ光景。
大勢の人々が行き交う、たくさんの店が立ち並ぶ通り。

ソレだけなら別にオカシイことなんてない。
否、バスの外を見たら見知らぬ場所だったっていう時点で十分オカシイが・・・。
けれど、目の前の人々が、店が、どう見てもオカシイ。

歩いている殆んどの人はRPGで見るような「魔法使い」の格好をし、立ち並ぶ店には普通じゃないモノばかりが並んでいる。

「・・・・・あ」

夢か。これは夢か。
うん、きっと夢だよネ。

頭を抱えて現実逃避に走っていると、バスが揺れた。


―――ガッタン!


「うわっ」

大きな揺れで身体が倒れる。

「・・・・・あれ?」

本日二度目の、ここは何処だろう。

バスの中に居たはずの自分の身体は、いつの間にか街の中に居た。

「あ、あれ・・・?」

何が、どうなってんの・・・?

乗っていたバスは跡形もなく消え失せて、隣の座席に置いてあった通学鞄は足元にある。
今自分は、あのバスの中から見た街の中に居た。


「ニンバス2000だ!カッコイイ〜」

直ぐ近くで、そう騒ぐ子供の声が聞こえる。

「にんばす、にせん・・・」

そいつはもしや、あの、めっちゃ速いと噂の箒のことですか?

声の聞こえた方向に顔を向けると、「新型!!」と大きく掲げられ輝く箒が、ショーウインドウに誇らしく飾られていた。
そこには数人の子供が、親であろう大人を後ろに、ガラスに張り付き群がっている。

「・・・・・え゛」

・・・ぁあ、嘘だよ。嘘。ありえない。

どこかで見たことのある、読んだことのある光景に、顔が引き攣った。

―――こんなことは、アリエナイ