すいません、そこ行く素敵なお嬢さん。
ちょいとこの無知な若造に、「漏れ鍋」の場所を教えてはくれませんか?

本日5度目の迷子です。










     S h a l l   w e   d a n c e ?  〜夢とダンスを〜   StEP,03










開き直ったオレがまずとった行動は、マトモそうな人を捕まえて道を聞くことだった。
とりあえず優しそうで、一人で買い物をしている中年女性をターゲットに。
それはもう、子供らしく可愛らしく純粋にね。

「あら、1人でお使いなんて偉いわね〜。漏れ鍋なら此処を真っ直ぐ行って・・・」

こうやってこのおばさんの後にも何人かに道を聞き、持ち前の方向感覚で激しく迷いつつ。
漸く1時間ほどで辿り着けたのが、あの有名な漏れ鍋だった。

「ほら、着いたぞ」

「わあ・・・!ありがとうお兄ちゃんっ」

親切にもここまでの道のりを案内してくれたのは、ブロンドヘアーと青い瞳が綺麗なお兄さん。

「じゃぁな、もう迷うなよ」

お兄さんは立ち去る際オレの頭をポンと撫で、魔法界のお菓子(らしきモノ)を数個くれた。

(お、お兄さん・・・w)

キュンッとトキめいた胸を押さえた手の中で、お兄さんがくれたお菓子が暴れまくっていたけれど。
そんな些細なこと、乙女のハートの前では全く無力だった。



漏れ鍋の中へ入り興味津々にウロキョロしながら、警戒心ゼロで暴れているお菓子を1つ口の中へと放り込む。
しぶとく口内で暴れる感触を数秒間だけ楽しんだ。
そしてトムさんらしきバーテンを見つけた途端、わざとガキゴキッと嫌な音をさせて噛み砕く。
不思議なことに、それ以降残された手中のお菓子はピクリとも動かなくなった。
ウケケケケ。ざまあみろ。

そのお菓子は意外にも、自分好みの甘くて美味しいチョコレート味。
動きといい味といい、なかなか楽しめるお菓子にますますあのお兄さんへの恋心が疼いた。
だが心の奥底へと沈めておこう。
所詮一時の報われない恋だから。放置放置。


トムさんを目の端に捕らえながら、念入りに店内の客1人1人をチェックする。
ハリーの時みたいにどもりの紫ターバンが居たら果てしなくウザそうだったから。
居ないのをしっかりと確認し、しおらしく瞳を潤ませ(もちろん嘘泣き)てからトムさんに駆け寄る。

「おじさん、迷子になっちゃったのっ。パパを見なかった?」

「おやお壌ちゃん、迷子とは大変だね。パパも一緒だったのかい?」

「ううん、違うの!パパは学校に行っちゃったの。でもね、直ぐにね、戻って来るってっ」

ここで本泣きスタート!

「あぁ、泣いちゃダメだよっ。学校って言ったね?パパは学校に行ったの?」

「ぅ。うんっ。ホグワーツの先生なの。名前はセブルス・スネイプって・・・」

「よーしよし、分かった。今おじさんが呼んであげるから、このココアでも飲んで待ってなさい、ね?」

「ぅん・・・」

涙に濡れた顔は小さな両手で覆って、オレは見事トムさんを騙すことに成功した。
ただ単純に会いたかったからという私欲的理由と、この世界で最も頼れるダンブルドアに会うため。
そんな切羽詰った(わりには随分と余裕な)理由で、セブルス・スネイプを呼び出したのだ。



自分を名指しで「パパ」などと呼ぶ小娘に怒り、待望のセブルスが漏れ鍋にやって来た。

黒い髪、灰の瞳、黒い服、辛気臭く殺気立った様子。
実際こちらのセブルス・スネイプという人間なんて知らないから、オレは彼の特徴を元に的を絞り一瞬で判断。

怒鳴られてトムさんに嘘がバレる前に、行動は迅速かつ冷静に。

「パパぁーっ!」

泣きながらギュッと、意外に引き締まった腰にしがみついてやった。
誰の腰って、セブルス・スネイプのね。

突然名も知らぬ小娘に「パパ」と呼ばれ抱きつかれる。
そんな貴重な経験をした彼は一瞬で固まり、オレはその隙を逃さず素早く連行した。
もちろんトムさんへのお礼と笑顔を忘れることなく。

行き先は暖炉。
その先は、夢にまで見たホグワーツ魔法魔術学校。