「なぜ我輩が・・・」
今日一日だけで、何度そう嘆いたんだろうね。
セブルスは。
S h a l l w e d a n c e ? 〜夢とダンスを〜 StEP,07
ダンブルドアに貰った金の鍵と、今朝セブルスにせがみ倒して出してもらったバッグを片手に。
オレの隣には憮然とした顔を器用に崩さず歩くセブルスが。
オレたちは今、グリンゴッツ銀行へと向かっていた。
昨日と変わったところをあげれば、セブルスが一歩前でなく隣を歩いていること。
そして自分自身の姿。
朝目覚めたとき、ああやっぱり夢オチはないかと思ったものの、その後のオレの行動はいっそ潔く、狡猾だった。
朝シャンついでに肩下まで伸びていたクセ毛を、ばっさり。
オレはこの髪を伸ばすまで、髪が短く利発な顔をしていたためよく男の子に間違えられた。
今しみじみと髪の短くなった自分を見て見ても、なるほど、これは男に見える。
こんなおいしいモノ、使わずにはいられないのが元現役高校生の性だ。
レッツ エンジョイ☆男装!!
悪戯好きのダンブルドアなら絶対に反対なんてしないだろうしね。
それを聞き流石に目を丸くしたセブルスに向かって、オレはいかにも楽しげに言いのけた。
「だってその方が面白そうだし、都合が良いんだよね、いろいろv」
ニコニコと言い募るオレにセブルスは眉間に皺を寄せただけで何も言わず、ただ無言で背を向けた。
ダイアゴン横丁をお互い無言で歩き、小さな店が並ぶ中見えた白い建物。グリンゴッツ銀行を目の前にした。
「へぇ〜・・・此処がねぇ・・・」
賢者の石がある例の・・・と感慨深げに関心するオレを置き去りに、セブルスはずいぶん先へと進んでしまう。
初めて見る子鬼をチラ見しつつ小走り気味にセブルスの後を追い、彼が指示する前にカウンターへと走り子鬼に鍵を渡して。
「アルバス・ダンブルドアの金庫をお願いしますv」
にっこり猫を被ったその笑顔に、セブルスは僅かにたじろいだ。
失礼な。
子鬼がダンブルドアの鍵を見ている間、オレはセブルスに言った。
「だいたいは読んだから知ってんのよ」
それを聞きセブルスはまた眉間に皺を寄せたものの、「そうか」と一言。
子鬼に案内され石造りの通路に出た。
そして此処に来てようやく、オレは肝心なことを思い出したのだ。
「げ。オレこういうの無理だった・・・」
トロッコを見つめたまま苦々しくセブルス並みの皺を眉間に寄せる。
「絶叫マシン・・・嫌い・・・・」
そう言いながら後ずさったオレの肩を、セブルスががっちりと掴んだ。
そしてあの悪魔の笑みで一言。
「乗れ」
風を切り右へ左へと猛スピードで走るトロッコの中、オレはずっと戦っていた。
身体の中から湧き上がってくる浮遊感や恐怖感と。
ぎゅっと強く目を瞑り、ぐっと強く、仕返しとばかりにセブルスに抱きついて。
「離さんかっ」
とか。頭上でずっと怒鳴っていたらしいけど、風の音やトロッコの走る音、自分の必死さで所々しか聞こえなかった。
というか無視。構ってられるほどの余裕はない。
トロッコが止まり、子鬼が開けたダンブルドアの金庫の中は、ガリオン金貨でいっぱいだった。
「ワオ☆貯えてるね〜」
涙目涙声で一言だけ溢し、いそいそと金貨はもちろん銀貨も銅貨もバッグに詰め込んだ。
セブルスはやっぱり、その様子を興味なさげに見ているだけだった。
だけどオレがトロッコに乗り込むとき、重いバッグを無言で奪い取るように持ってくれたのだ。
きっとオレのあんな姿を見て、少しは悪いことをしたと思ったのかもしれない。
むしろそう願いたい。
帰りのトロッコ内では何の文句も言わず、ただ黙ってしがみつかせてくれた。
そんなセブルスに胸をキュンキュンときめかせながら改めて思う。
女ってさ、やっぱりこういう不器用な優しさに弱いんだよね。
地獄のトロッコ走がようやく終わって、後は買い物だけとなった。
まずはグリンゴッツ銀行を出て直ぐに目に入った“マダムマルキンの洋装店”へ。
セブルスは「外に居る」と言って店へ入るのを拒んだ為、仕方なくオレ一人で乗り込んだ。
「坊ちゃんホグワーツなの?全部ここで揃いますよ」
店に入った途端に藤色の服を着たマダム・マルキンが愛想よく言った。
「ホグワーツです、お願いします」
こちらも愛想よく返し、ハリーやドラコのように踏台に立ち寸法合わせをする。
寸法を合わせている間、もしかしたら女ってバレるかもと少しドキドキしたものの、マダムは全く気付かず。
店を出る最後までオレを「坊ちゃん」と呼んだ。
ローブや帽子、コートの入った袋は店から出た途端にセブルスが奪うような形で持ってくれ、それに苦笑しながらもオレは嬉しく報告した。
「女ってバレなかったv」
「・・・・・そうか」
多少疲れた顔で、セブルスはボソッと答えた。
次に向かったのは文具店。
ハリーの沈んでいた気持ちが上がったのも無理はないなと思うほど、面白い場所だった。
色とりどりの羽根ペンにインク。
オレは目を輝かせて全てを見て回った。
セブルスはそれに嫌な顔をしつつもちゃんと付き合ってくれ、買うべき必要な物やあれば便利な物まで教えてくれる。
「羽根ペンは多めに買っておけ。初めて使う奴は慣れるまで何本も折る」
「はーい」
大量の羊皮紙と羽根ペンにインクは比較的軽かったから自分で持った。
右手に金入りバッグ、左手にローブ入り袋と、セブルスももう両手が塞がってたしね。
次は何処に行こうかと考えて、まだ買っていない物を考えて、両手の荷物を考えて。
「・・・・・鍋買ったら一回帰ろうか?重いし」
この荷物でこの後教科書を買いに行くのはちょっと無謀に思えたから。
「・・・魔法で小さくすれば問題はない」
そう言って荷物を一度置き、セブルスはおもむろに杖を振り上げた。
「レデュシオ 縮め」
杖から出た光に包まれて、重くかさばっていた荷物が一瞬で小さく縮んだ。
「・・・魔法って何でもアリだなぁ。これだからロクな大人にならねぇんだよ」
「・・・・・」
何も反論してこないところを見ると、少しは彼もそう思っているらしい。
改めて小さくなった荷物を持ち、一つだけ大きさを変えなかった金入りバッグを持つ。
「じゃ、次は本屋へ行こう!」
キラーンと今までになく顔を輝かせ、足取りも軽やかに。
セブルスはオレの浮かれっぷりを不穏に思ったのか、ただ眉を寄せた。
魔法界の書店は、正直言ってオレのパラダイスだと思う。
そう思わずにはいられないほど興味深い本の山。
セブルスにも手伝ってもらい教科書はさっさと購入。
「『魔法薬調合法』、この本全部覚えればセブルスの授業で点もらえる?」
「・・・お前がスリザリン生ならばな」
その考え方、ほんっとうにスリザリン気質だね。
それならばと話を変えて。
「セブルス、今後役に立つようなお勧めのいい本教えてよ、買うから」
眉間に皺を作り大きな溜息を吐いただけで、結局は6冊も面白そうな本を教えてくれた。
推察するに、どうやらセブルスはもうオレの言動については諦めているようだ。
オレのあまりの動じなさに、あの恐ろしい殺気を飛ばすこともない。
セブルスって意外と、嫁さんに尻を敷かれるタイプかもね。
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