明日、キングズ・クロス駅11時発。
・・・
・・・・・キングじゅっ、ず!ズ!ズぅ!!
い、言い難いんだよチクショー・・・!
S h a l l w e d a n c e ? 〜夢とダンスを〜 StEP,13
今日はいつもより、2時間も早く目が覚めた。
現実の世界で暮らしていた時はここで2度寝に突入するところだけど、オレはのそりと起き上がる。
今こちらの世界には、朝食を作ってくれ洗濯をしてくれる母はいない。
このオレとセブルスの生活では、オレが進んで・・・というよりは、必然的に母親役となった。
そうなれば朝はなるべく早く起きて、ちゃっちゃと家の事をやるに限る。
顔を冷たい水で洗ってさっぱりし、寝巻きから普段着に着替え、足音を忍ばせて階下のキッチンへと向かう。
セブルスを起こすのは大抵8時だから、まだまだ時間がある。
何をしようかと考えて、読みたい本もやるべき家事も今はないことに気づいた。
「ん〜・・・・・」
ソファに体を沈め、ぐぐっと伸びをする。
2、3分そのままボケッとした後、与えられた自室へと戻り、自分の荷物という荷物を全てベッドの上に広げた。
この世界に来てから毎日をゆったりと過ごしていたけど、月日が過ぎるのは意外と早い。
気がついたらもう明日が、夢にまで見ておきながらすっかり忘れていたホグワーツの入学式だった。
2ヶ月ちょいしか住んでいないわりに、少しばかり蔵書が多い気がする。
好奇心に駆られて買ったお菓子類は全て購入したその日のうちに腹の中へと収まったが、消費の仕様がない蔵書は山となっていた。
「・・・・・半分置いてくか」
セブルスに許可を取ることもせず決定。
学校では禁書ものの本や内容が頭に入っていない本、これから独自で勉強するために必要な本だけを残し、後は元の本棚へと詰め込んだ。
ホグワーツで使う教材と蔵書。
自力で買い集めた薬草類などなど。
全てをダイアゴン横丁で数日前に買った、見た目の倍以上荷物が入る便利なトランクケースに入れた。
そして最後に、ケース内に残ったほんの少しのスペースへと、列車内で着るローブを詰める。
「ぅ゛。ぎりっぎり・・・・」
なんとか全てを1つのケースに収め、一息吐く。
仕上げに昨日セブルスに教わったばかりの、物の重さを軽くする魔法をケースにかけてみた。
え?学校以外での魔法使用は禁止されてる?
オレにはセブルスがいるから大丈夫だってば〜★
試しにケースを持ち上げてみると、軽々片手でひょいと持ち上がる。
見事一発で成功、ニヤリ。
ベッド脇にケースを置き、その脇に黒く長細い包みを置く。
包みの中は言わずもがな、ノクターン横丁で購入した日本刀・煉鬼丸こと“レンちん”(ネーミングセンス最悪
やっぱり腐っても(!?)オレは日本人。
魔法使いのように杖よりも、侍のようにレンちんを持っていることの方が多い。
昔から年子の弟たちと喧嘩やチャンバラ遊びの日々だったから、刀の太刀筋は自分で言うのもあれだけど、なかなかのものだ。
刀であるレンちん自身が真剣の扱い方を教えてくれるしね。
「何だ、それは・・・」
煉鬼丸をいつも持ち歩いていたが故、セブルスが不振がり聞いてきたことがあった。
ただオレはにっこり笑って何も言わなかったけど、あの様子じゃ大体分かってそうだ。
荷物をまとめた後は部屋を軽く掃除して、時間を見て朝食の仕度を始める。
今朝は野菜のスープにトーストとシンプルメニュー。
軽快な足取りでセブルスの自室へと向かい扉を開けた。
昨夜も学校の仕度なんかで徹夜したらしく、まだ布団の中でぐっすりと眠っている。
オレは口元を緩ませながら魔法界のカメラを取り出し構えた。
そのまま数分間、可愛く眠るセブルスを動く写真で撮り続け、十分満足してから一旦カメラを自室へと置きに行く。
戻ってきて緩んだ顔をそのままに、低血圧なセブルスをいつもと同じ方法で起こしにかかる。
セブルスの耳元に自身の口を近づけて。
「ダ〜リン、お・き・てんw」
「ぐっ・・・・・ヤメロ」
心底嫌そうな、物凄く不機嫌な顔と声で目覚めたダーリンことセブルス。
彼は揺すっても名前を連呼しても起きなかったが、冗談でコレをやってみたところ凄まじい勢いで目を覚ました。
そのためこの2ヶ月間はずっとこの手段を使っている。ご愁傷様★
「お早う、セブルス。飯にするから迅速に下へ来い」
「・・・ぁあ」
顰めっ面ながらも律儀に声を返してくれる、セブルスのこんなところがオレは好き。
朝食を食べた後、2人でゆっくり紅茶でも飲もうかと思っていたが、セブルスは早々に研究室へと篭もってしまった。
扉が開かないように魔法までかけやがったし。
(こんなところで無駄に「MP」使いやがって・・・!)
無理矢理にでも扉をぶち壊そうかとも思ったが、それはそれで自分のMPの無駄遣いだと判断し止めた。
しばし閉ざされた扉を見つめ、ぽつりと呟く。
「・・・菓子でも作るかぁ」
明日の列車内で食べるように、美味くて面白いお菓子を。
正直な話、もう魔法界の菓子は食べ飽きたから、前々から自分で面白ビックリな必殺菓子でも作ろうかと考えていたのだ。
「よし!残った菓子の材料使っちまうか」
時間はまだあるから、ハリーたちの分までたっぷり作ろう。
もちろんセブルスの分も。
仕掛けたっぷりのお菓子を作り、お昼の仕度して。
研究室から漸く昼食を食べに出てきたセブルスと食べる。
「最後の晩飯、何がいい?」
また研究室に篭もってしまいそうだったから、食事中に聞いた。
「・・・・・最後ではないだろう」
「?・・・・・・・・・・ぁ、ぁあ〜って恥ずッ!『また来年も一緒だろ?』って意味っしょ?!
なあっ?!!ある意味ソレってプロポーズだし!?」
「な!?違ッ「違わねー―――!!!」
ホグワーツ入学前最後の昼食は、この2ヶ月ちょっとの間の中で一番印象に残る会話をした。
余談だが、やっぱりセブルスをからかうのは楽しい。
−+−+−+−+− 追 記 −+−+−+−+−
作中に出てくる用語についての説明です。
「MP」とは、マジックポイント=魔力数値
所謂TVゲーム用語
と、なっております。
≫次章へ