暢気に陽気に、鼻歌を歌う男が一人。
青々とした森の奥、履き潰した靴を引っ掛けて、下は下着のまま、上は裸と半裸状態。
「〜♪」
右手には採れたて新鮮な薬草の入った籠。
左手には歌を指揮するように振り回されている木の棒――もとい杖が一本。
「ふふ〜ん♪」
テンポの良い歌は綺麗に整備された薬草畑を横切る。
「んん〜・・・ん?」
薬草畑の奥、夜になると月明かりが差し込む小さな泉に、男は少年を見つけた。
S h a l l w e d a n c e ? 〜時とダンスを〜 StEP,01
香りの甘い紅茶を一口。
毎朝の日課を友と共に楽しんでいた優雅なひと時は、酷く喧しい物音によって壊された。
「―――っ、ロウ!ロウ!」
朝っぱらから元気なその声に振り向くことなく、もう一口味わう。
「リック。そんな大声出さなくても、貴方の声は通常より大きいのだから聞こえているわ」
それから声をかけるときはそう何度も呼ばないで頂戴。と、“ロウ”と呼ばれた女は努めて冷静に返した。
全く彼は、いくつになっても落ち着いてくれない。
呆れた様子でゆっくりとリックに目を向けた彼女は、その眼鏡の奥の目を見開いた。
「リック!今度は何を仕出かしたのっ!?」
その鋭い目線の先には、リックの浮遊魔法でふわふわと浮かべられた黒髪の少年が。
軽く殺気だった視線を受けてもなお、彼は快活に笑った。
「さっき拾った!」
ニカッと白い歯を見せ笑んだリックに、ロウは痛み出した頭を抱えて呟く。
「お願いだからちゃんと、説明してちょうだい・・・」
リックが言うには、朝早くから森へ出て目的の薬草を採った帰り、小さな泉の側に少年が倒れていた。
いくら声をかけても目を覚まさないし、この場所へどうやって入り込んだのかも分からない。
「だから拾ってきた」
「そう・・・だから、ね・・「んぅ・・・」あら?」
「お!」
一旦ソファへと寝かせていた黒髪の少年は、その時静かに目を開いた。
軽く身動ぎながらまだ覚醒し切らない目元を擦っている。
目覚めようとする少年にリックはキラキラした目を向けた。
しかしロウはまず、この少年のことは置いて置くことにした。
少年よりも気にかかった―むしろ怒りに触れる―言葉がリックの口から聞こえたからだ。
「ねぇリック、最近私の薬草畑が荒らされていて困っているの」
「は?薬草畑が?」
「そう。私が毎日丹精こめて作っている薬草が、私が収穫する前に盗られているの」
「薬草泥棒じゃねぇか!」
「ええ、そうね・・・ところで」
ロウはここで一度言葉を止め、とびっきり美しい笑みを見せた。
「貴方の持っているその薬草、どこで採ったのかしら?」
その細い指に指差された己の持つ薬草を見、もう一度ロウの美しい笑みを見て。
「俺が薬草泥棒か!」Σ(◎□◎;)ガーン
「今更?!」Σ(´Д`;)ガーン
信じられない、この人・・・。
思わず頭を抱え込んだロウと、その様子を見てうろたえながら謝るリック。
そんな二人の様子をちゃっかり覚醒して見ていた黒髪の少年―アキラ―は、見知らぬ状況に困惑しながらも思っていた。
「(ワー・・・マルフォイ一家以来の美人さんと色男だー)」