ずるずる、“月の泉”から一直線、引き摺られるように放り込まれた一室。
そこは映画で見たような温かいグリフィンドールカラーに包まれていた。
赤いソファへ問答無用に座らされ、何だか楽しげに鼻歌歌いながら暖炉に火を付けるゴドリックの背を眺める。
ロウェナはここへ来る途中、何か大事なことを思い出したように何処かへと跳んで行ってしまった。
ヘルガもこれまた、可愛らしい声で

「アキラのためにお菓子を持ってきてあげるっw」

と、満面の笑みでスカートのフリルを翻し、アキラの返事を聞かないままに跳んで行ってしまった。

正直、気まずい。
気まずいぞコノヤロー・・・。

能天気な彼とは意見があっても、その常に高いテンションが合うことはない。
出遭って一時間ほどの僅かな時間でさえも、アキラをそう確信させる無駄なパワーが彼には感じられた。










     S h a l l   w e   d a n c e ?  〜時とダンスを〜   StEP,05










ヘルガが胸(心はもちろん、文字通りその豊満な胸も)躍らせながら扉を押し開けた時、そこは戦場だった。

「おおおおおお落ち着け、落ち着くんだっ」

「それをお前が言うか・・?」

「おおおおおお?!おおう!?」

鋭い牙をキラリ光らせ、「シャァー!」と威嚇する巨大な白蛇。
ターゲットは誰が見ても明らか、グリフィンドール・ゴドリックその人だった。
蝋燭の火が揺れる度、その白い鱗は妖艶な薄紫に鈍く光る。
美しい光沢の体をゴドリックの体に、逃がさないと言わんばかりに巻きつけ、大きな口をパカリ。

「シャァーッ!」

「うわわわわわ!」

白蛇の背後に控え両腕を胸の前で組み、「フンッ」と仁王立ちした男は頭上で一つに括った髪を揺らした。
さらり、見惚れるほど綺麗な銀糸が肩を伝い背に落ちる。
怒りの混じった、冷たく低い声が命令を下した。

死なない程度に絞めてやれ

「シャァ!v」

「ちょっ、何て言ったのぉおおおお?!絞まる絞まる絞まってるッ!」

心なしか楽しそうに主人の命を忠実に聞く白蛇と、喧しく騒ぐゴドリック。
少しばかり満足そうな、だけども眉間に皺を寄せたまま銀糸を揺らし振り返った彼は、僅かに目を見開いた。

「・・・いたのか」

「うんw」

にっこり笑むヘルガは、そこでようやく扉から体を離し中へと足を進めた。
そして部屋の中を軽く見渡す。

「あらぁ?」

首を傾げるヘルガが両手で持った銀の盆を、彼は至極自然な仕草で受け取りソファ脇の机に置いた。
手に盆がないことに気付いていないのか、両手を胸下の高さで上げたまま彼女はウロキョロ忙しなく周囲を見渡す。

「・・・・・あらぁ?」

もう一度首を傾げた彼女はようやく、自分の中の疑問を目の前の彼に問うた。

「ねぇ、サラ。リックと一緒に可愛い子、いなかった?」

その問いに一瞬だけ体を硬直させた“サラ”は、やや気まずそうに頭上へ目を向けた。
彼の翡翠の目を追って頭上を見上げたヘルガ。
蜂蜜色の穏やかな瞳が真ん丸く見開かれ、おっとりとした彼女が出したとは思えないほど大きな声を出した。

「何てことを・・!今すぐ下ろしなさいサラザール!!」

ピシャリ!まるでロウェナのような(むしろ普段とのギャップを考えるとロウェナよりも怖い)厳しい叱り声。
そうなった張本人である“サラザール”はビクッと体を竦ませたあと、恐々頷いた。
同じ部屋でやんわやんわしていた白蛇とゴドリックですら騒ぎを完全に止め、冷や汗掻きながらヘルガを伺っている。
その一部始終を天井近く、豪華なシャンデリアの真横でふわふわ浮かびながら眺めていたアキラ。


 ロウェナ = ヘルガ > サラザール >>> ゴドリック


アキラの頭の中、彼らの公式が意外な形で確立した。