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大好きな大好きな、あたしの片割れ。大事な大事な、あたし自身。片翼。なくてはならないもの。心の半分。体の半分。命の半分。そして、あたしの世界。この世に生まれたその奇跡的一瞬から、あたしと亮ちゃんはずぅっと一緒。呼吸をして、目を見開いて、親の顔を見て、生まれた声を上げる。自分の足で立ち上がる。言葉を話す。遊んで、学んで、ランドセルを背負って駆ける。そうやって成長を、生きることを共にしてきた。中学生になってからは大きな学校に通うことと、亮ちゃんが思春期なんかに突入しちゃって離れる個人の時間が多くなって、少し寂しいながらやっぱり家じゃベッタリしてて、小学生の時に始めたテニスを亮ちゃんは本当に楽しそうに、楽しそうに・・・
「それで・・・なに、その髪」
いつも通りに玄関で愛する兄、亮ちゃんを出迎えたあたしは、柄にもなく数秒だけ固まった。それから一瞬で今までの愛のメモリーが頭の中を過ぎ去って、ようやく、ようやく、低い低い亮ちゃんを知る人が聞けば「え、何怒ってんの宍戸?!」なんて声が出た。玄関の戸を開けたその時から既に固まった顔をさせていた亮ちゃんはそんなあたしの怒りの声にビクリと震えて、不服そうな申し訳なさそうな・・ともかくこちらを伺い見るように上目遣いであたしを見る。拗ねたように尖らせた口がもごもご動いた。
「・・・イジメ?」
可愛い兄の姿に少しだけ優しい声で、柔かく笑んで、だけれどひどく冷え切った目のままに問う。亮ちゃんは激しく首を横に振った。まあ、そうでしょうね。天下のテニス部の三年苛めるって、どんなバカよ。それなら、と、
「誰がやったの?」
さらり、自分の肩で揺れる黒髪を意識して聞いた。亮ちゃんの、今朝までは昼までは放課後ちょっとだけ見かけた時まではあたしとお揃いのキレイな黒い長髪・・・で、あったはずの、ざんばら頭を睨みつけて。
「じ、じぶん、で・・」
「・・・そう」
亮ちゃんはこんなことで嘘なんか吐けない性分だし、相手があたしだから更にアリエナイ。嘘ではない、自分で切った。キレイだったあたしとお揃いの、髪を。そりゃあね、近々何かあるだろうとは、予想ぐらいしていた。亮ちゃんがテニスで負けて、レギュラー落ちしちゃって、それから毎日レギュラー復帰だけを目指して遅くまで傷を作って帰って来て、あたしも家族も何も言わないでいた。ただただ亮ちゃんのために毎日救急箱を手に持って帰りを待った。栄養のつく夕飯を用意して待った。あったかいお風呂を用意して待った。笑顔で待った。でも。その結果が、コレ?
「太郎・・・!!!!!」
「ひっ・・!」
昨日までと違った亮ちゃんの表情で、ようやくレギュラーに復帰できたと聞かずとも分かった。そしてそのために髪を切ったということも。イコール、あんのダンディ音楽教師てめぇええええええ!!!と、怒りや恨みはただ全て、全てが、一人の人物へと向かうことになった。
そうしてはじまる、あたしの復讐劇。