おかえりお姫様










みっともなく泣きじゃくる俺の手から、小さな白い手が離された。行かないで。連れて行かないで。声が枯れるまで叫んだ。喉の痛みなんてちっとも気にならなかった。ただ離されるのが嫌で、嫌で嫌で。

「みや!みやぁっ!」

嫌々と駄々を捏ねたのは俺だけ。肝心の小さな女の子は透き通るように静かな黒い目を俺に向けて、ぽつり小さな声を宥めるように溢しただけだった。

「マサにー、泣き虫」

僅か五歳の可愛い妹のその一言に、僅かながらも兄として男としてのプライドを形成しつつあった七歳の俺は深く傷付いた。茫然自失。その間にも妹は親に叔父に連れられて、仁王家を離れた。





あれから約八年。俺は今年十五歳に、妹は十三歳になる。病を克服した可愛い妹が、ようやく俺の元に帰ってきた。





新幹線のホームで姉ちゃんと出迎えて、俺は真っ先にその細い体を抱き締めた。周りの視線なんて気にしちゃいかん。ぎゅっと細い、折れそうな体を抱き締める。柔かい。細い。大きくなった。女っぽくなった。妹だ。俺の妹。大事な大事な俺の肉親。俺のお姫さん!雅!

「何してんのアンタは」

「いでっ」

後頭部を遠慮ない力で叩かれて、思わず俺はその体から手を離した。

「姉ちゃぁぁぁん・・」

兄妹の感動の再会に口も手も出すとは。恨めしい目で睨んでやる間に姉ちゃんは妹を抱き締めていた。ああ!盗られた!

「ミヤちゃんお帰り」

「うん、ただいま。お姉ちゃん綺麗になったね」

「やだ!もうこの子ったら可愛いんだから〜!」

マサとは大違い!なんて失礼極まりない発言はこの際無視する。

「姉ちゃんミヤ返せや!」

ミヤは俺のお姫さんじゃ!