兄はシスコン










私の兄、雅治は、どうしようもなくシスコンである。思い起こす必要もない八年前、まだ七歳であるというのに既に兄のシスコン具合は度を越えていた。その対象が私たちの姉であれば、私だってここまで頭を悩ませない。問題なのは、対象が私である、ということ。

「ほれ、ミヤ。荷物はこれでいいんか?大丈夫か?」

「あ、うん・・」

「何か欲しいもんありゃ遠慮せんと言いんしゃい。何でも兄ちゃんが買ってやるけぇね!」

そう言って笑った兄を見て、擦れ違っていくお姉様方は皆頬を赤らめた。確かに、兄は格好いい。モデルでも出来るくらいに華がある。さらっと揺れる銀髪。涼しげな目元。口元のセクシーなホクロ。身長もある。テニスをずっとしているだけあってスタイルだっていい。そのうえお洒落。話し上手。

「兄さん、モテるでしょう?」

唐突に聞いてみた。兄は突然の私の問いにそりゃあビックリしたように目を見開いて、そして直ぐに破顔してみせた。その兄の蕩けるような笑顔に私の方が驚かされたんじゃなかろうか・・。

「ミヤ、そんなんは無駄な心配じゃよ・・」

「・・・・?」

心配って、何が?とは、嬉しそうに勿体ぶって話す兄には問えず、心中だけで首を傾げた。それが悪い結果を生む。

「俺はな、まだまだミヤただ一人」

そこで骨張ったキレイな手の人差し指を、キレイに立てた兄は、

「ミヤ一筋じゃけぇ」

ふっと、流し目に微笑をプラス。どんな女もこれには落ちるだろうオプションてんこ盛りを、私にやってみせた。

「兄さん・・」

そういうこと、そういう台詞は他所の人にお願いします。確かに兄は格好いい。自慢の兄だ。何処へ持っていっても恥かしくない。だけど、だけどね?私は妹なんです。兄と禁断のラヴとか全く興味のない普通の一般常識を装備した一般人。実の兄にそんな、女の人に対するような行為をされても、正直、ぶっちゃけ・・・

「きもい」

「うおっ!?」

一言と一緒に、兄の長い足の膝裏を狙った蹴りはしっかりと命中してくれて、格好いい兄の膝カックンされてコケそうになるという貴重な場面を拝めた。コケそうにはなっても器用にコケてくれず、「さっすが俺の妹じゃの、今の行動は読めんかったわ〜」なんて嬉しそうに言われちゃ、どうにも悔しい思いしか胸には残らなかったけれど。