秘密の関係
朝の登校。
授業中。
休み時間。
廊下の移動。
昼休み。
放課後。
帰り道。
それら全てで、俺たちは会話はおろか対面すらせず、たまに、極稀に、俺にとっては奇跡的な確立で遠目にしろ姿を確認することが出来たり、廊下の端と端で互いに友人を連れ添って擦れ違う。そんな、僅かな接触すらない事が、ひどくもどかしくもあり優越的でもある。あの子は俺の可愛い可愛い大事な唯一の妹で、それを知る人間は教師などの極少数。そうしてチラっとだけ向けた視線が合う嬉しい事実を知っているのはこの瞬間、俺たちだけ。
「仁王君、どうかしましたか?」
眼鏡越し、柳生が怪訝そうに見る。それを肩を竦めた動作で流して、俺は必死に表情筋を固めた。見かけるだけで目線がじっと、じっとミヤだけを追ってしまう。まるで俺の目がはじめからそんな機能しかないみたいに、その時だけは何を置いても景色が一瞬で色褪せて、モノクロの中、ミヤだけが鮮明に映りこむ。どうしようもない。どうする気もない。それだけでいい。会えなかったあの地獄みたいな日々を思えば、十分だ。
「・・・仁王君?」
「ん、何でもなか」
柳生の再度の呼びかけに、さすがに今度こそは視線を逸らせた。友人の誰にも・・気心知れたテニス部連中であろうとも、ミヤの存在を知らせるわけにはいかない。悪い虫は極力少ないに限る。まだまだ、まだまだ。可愛い俺の大事な妹に、近付かせてやるものか。