自分には心がないのだと。
だから残忍に、一寸の躊躇もなく、大勢の人を殺せる。
お前なんか「殺せ」の命令一つで簡単だ。
ニィっと笑ったその顔は確かに、どう見ても悪役そのもの。
だけど、その水浅葱の瞳が、俺には何故か泣いているように見えたんだ。
殺せると言いつつも、会うたび死闘を繰り広げても。
お前は俺を殺さずに立ち去っていく。
そして水浅葱はいつだって泣いている。
命令なんかなくたって、お前は多くの人を殺すのだろう。
それなら、この俺を生かす理由は・・・?
ただの暇潰し。
丁度いいストレスの発散相手。
喧嘩友達・・・では、ない。
お前と俺は命を賭け合う敵同士。
それ以上でもそれ以下でもない。
・・・はずだ。
ライバル。好敵手。
なんて呼べるほど甘い繋がりもない。
なあ、そうだよな?
そうなんだよ、俺たちは。
死神と破面。
殺し合う。
奪い合う。
斬って。斬って。斬って。
切って。
――― 何を
身体を。
・・・心を。
赤い血が舞う。
刀や身体に滴り落ちる。
血は同じ色なのか、なんて。
殺し合いの最中だってのに、馬鹿みたいなこと考えた。
「ははっ!真っ赤だな!」
考えていたことを見抜かれたのかと思った。
でもこいつは、悪戯を思いついたガキみたいにキラキラ笑って。
何が可笑しいんだこの野郎。
なんて文句、俺が言えるはずもなく。
「・・・そう、だな」
ほんの小さな遣り取りが胸を痛くする。
なんか、泣きそうだ。
らしくない弱った笑みを浮かべて、水浅葱の瞳を見た。
あれ。
いつもと、違う・・・。
どうやら“らしくない”のは俺だけに言えたことじゃないらしい。
泣いていたはずの水浅葱はもう、笑っていた。
君が笑って俺が泣く