skylineで恋をして
■その9
【黒崎一護の場合】
リビングと通じているキッチンも綺麗に掃除されていた。
と、いうよりはむしろ・・・・・使ってない?
「飯は・・・?」
まさか。
そんなまさかと思い恐る恐る聞いてみれば、聞かれた本人はひどくあっけらかんとした顔で言った。
「え。コンビニとか」
「バッカじゃねぇのッ?!」
「バカじゃねーッ!」←条件反射
いや、バカだってことは知ってたけど!
部屋の隅に置かれたゴミ箱を見やればなるほどその通り、見知ったコンビニ袋がゴミを詰めた状態で捨てられている。
そういえば学校でもこいつは学食・コンビニ・購買の三択しかない。
今までは一人暮らしだから弁当を作る余裕がないのだと思っていたが(実際毎朝遅刻寸前だし)、
事実はただ“作らない”だけだったのか。
「勿体ねぇー・・・」
ピカピカのシンク、汚れ一つないカウンター。
最近良く聞くシステムキッチンというヤツだ。
勿体ない、勿体ない。
使わないなんて勿体ない・・・!
「宝の持ち腐れだ・・・」
「はあ?」
「豚に真珠ぅ〜・・」
「うるっせえ!」
家主の体みたいに無駄にデカイ冷蔵庫から取り出したミネラルウォーターのボトルを片手に、
恋次は偉そうに踏ん反り返り宣った。
「だから言っただろーが。“一護が家事担当”だってよぉ」
「・・・お前は“食って寝る”だけか」
「おう!」
これで問題は万事解決!
と言うように満足げな笑みを浮かべてボトルから直接水をゴクゴク飲んでいく様を眺めながら、
一護はもう一度だけ綺麗過ぎるキッチンを見た。
綺麗だ、本当に。
ウチの古い、キッチンというよりは台所と呼べる物と違い使い勝手も良さそうだ。
無駄に設備も整ってるし、ウチじゃ中々作れない物(主にデザート類)も作れるかもしれない。
つーか、作りたい。
「・・・・・キッチン、借りていいか?」
「あ?何、飯作んの?」
期待したように瞳を輝かせた恋次には悪いが、俺は今、無性に甘い物が食いたい。
チョコレートケーキだとかフルーツたっぷりのタルトだとか、ああ、カスタードたっぷりのシュークリームもいい。
「買い物行こう。スーパーだスーパー!」
「おお、スーパーなら近くにあるぜ!」
やったぁ飯だー!と一人騒ぐバカを放って、俺の頭の中はスイーツのレシピが踊っていた。
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