skylineでをして   



■その13
 【
グリムジョー・ジャガージャックの場合】





なぜ貴重な休日に、ガキ共とやりたくもない“かくれんぼ”をしなくてはならないのだろうか。
学校側から言われたGW中の祭り会場での夜間パトロール、人混みに顔を凄ませながらつらつら歩く。

大体高校生ともなりゃこんな時間に出歩くことなんざ普通だろ。
今時小学生だって夜遊びぐらいしてるじゃねーか・・・ホラ見ろ、ありゃまだ小学生だろ。
親はどこだ親は。
よく補導されねーな。

そうやって偶然にグリムジョーと目が合った子供は、ビクンッと体を竦ませて涙目になった。
折角の休日を潰されてガキ共と“かくれんぼ”
(夜遊びしてるガキを見つけて追いかけ捕まえるのだから、これは“かくれんぼ”だとグリムジョーは思っている)
そして祭り会場を埋め尽くす、この人のゴミゴミとした多さ。
不機嫌の絶頂である。
普段から怖い顔が更に怖さを増していた。
そしてグリムジョー本人がそれを全く気にせず、むしろ不機嫌をバラ撒いているのだから始末に終えない。

・・・ぁ。
あそこにいんの、確か三年の特進の・・・・・ほっとこ。

学年トップが集まる特進クラスの男子生徒が三人ほど、すぐそこのたこ焼き屋にいた。
特進クラスにいい子よろしく収まっている奴らを捕まえるのは簡単だ。
賢いのだから、どうせ逃げるなんて無駄なこともしない。
だがそのクラスの担任がなんとも厄介だった。
グリムジョーの苦手な部類の人間である。
下手に関りたくない。
触らぬ神に祟りなし。

あーあ、ウルキオラんとこの奴いねえかなー。

同期の教師でありグリムジョーの担当する一年五組の隣の隣、一年三組を担当するウルキオラ。
苦手を通り越して嫌いな人間だ。
クラスのこと、部活のこと、担当教科のこと・・・細かく挙げていけばキリがない数の理由で毎日毎日衝突している。
そのウルキオラのクラスの生徒か、部活の生徒。
そいつらがいれば一番いいと思いながら視線を走らせる。

違う。
違う。
違う・・・知らない奴しかいねえじゃねーか。
んん?
・・・違う、か。
あ、野球部の遊撃手じゃねぇの?
一丁前に女とデートかよー。
・・・・・仕方ない。
暇だから邪魔してやるか。

こうして無常にも
「暇だから」
との理由で餌食に選ばれた野球小僧との距離を縮めていくなかで、ふと視線の隅に鮮やかな色が映った。


黒崎 一護


反射的に視線が色を追う。
その時にはもう、目の前で彼女と楽しげに遊ぶ野球小僧のことなんて忘れていた。
色鮮やかな祭り特有の明かりの中、一際目を引くオレンジ頭。
自分のクラスの生徒だ。
入学してまだ一ヶ月だが、既にこいつが真面目な人間だということを知っている。
頭もいいし態度もいい。
自分の生徒にしては優秀で、普通の男子高校生と何ら変わりない奴だ。
ただ頭髪の色が派手なだけで、それが地毛だというのも噂に聞いて知っている。
生徒指導に張り切るおっさん共は「黒に染めさせろ」と五月蝿いが、別にいいじゃないか。
地毛なんだから。
そう思うグリムジョー自身も派手な水浅葱色の髪をしている(もちろん地毛だ)から、余計にそういう声が五月蝿く思う。
おっさん共は暗に、グリムジョーの髪を注意している節があるからだ。
職員室でほぼ毎朝のようにかかるそんな上からの重圧を、
らしくもなく「まぁまぁ」と宥めて(脅して)やるくらいには気に入っている生徒だった。

「・・・あ?」

何してんだ、あいつ・・・喧嘩か?

己の生徒の周りには、どう見ても「俺たち不良です」といった格好の厳つい男が五、六人いた。
囲まれている状態の生徒も厳しい表情をしている。
“お友達”という雰囲気でもなければ、“これから喧嘩”という雰囲気でもない。
ピアスをじゃらじゃら付けた男が生徒の左腕を掴んだ。
そのまま何処かへと移動していく。
目が追うままに足を向けて橙髪の後を追うが、人の多さが障害になって中々前へと進めない。

「・・・ぃ・・おい、グリムジョー」

名を呼ばれ、ぐいと乱暴に腕を引かれた。

「いっ、て、テメェ何しやがる!」

しれっとした顔の天敵ウルキオラがそこにいた。
グリムジョーと同じ一年担当の教師なら、今夜はやはり夜間パトロールに出ている。
だからと言ってこの人の多さと祭り会場の広さを考えると、遭うなんてこと万に一つあるかどうかだと思っていたのに・・・
万に一つで遭ったのが、よりにもよってウルキオラだ。
盛大な舌打ちと嫌な顔を隠しもせずに向けた途端、ハッと振り返る。
人の波の中でどうにか追っていた自分の生徒の姿は、もちろん見えなかった。

「って、め・・!見失ったじゃねーか!どうすんだッ」

「何がだ」

ふう、と溜息吐く相変わらずイラつかせてくる態度に危うくキレそうになりながらも、
体はウルキオラを放って走り出していた。
人混みを些か乱暴に抜けながら、奥へ奥へと進んでいく。
そうしている内に人の数はまだらになり、屋台も点々と減っていく。
遂に祭りの会場からは随分と離れた薄暗い路地へ出たが、
何か揉め事を起こすならこういう場所だと長年の勘が告げていた。
自分の荒い息を静めながら足を止めて、鋭く視線を巡らせる。
耳も使えば、少し離れた建物の影で荒い物音がした。

「ハッ・・・・ビンゴ」

ぺろりと乾燥した唇をひと舐めして、獰猛に目を細める。
骨のぶつかる音のする場へ静かに近付けば、考えていた通り生徒は複数を相手に戦っていた。
敵さんの内の二人はバットを持っている。
明らかなリンチ現場だ。

「見ぃつけたー」

殺伐としたその場に合わない楽しげにも聞こえる声。
振り向いたその
が、真ん丸く見開かれた。









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