skylineで恋をして
■その14
【黒崎一護の場合】
不良に絡まれるのなんていつものことだ。
だけど今回だけは、何かが違った。
「おい黒崎、ちょっと付き合えよ」
ピアスがじゃらじゃらと多い下品な笑みを浮かべた男が、不意に俺の前を塞いだ。
男の仲間らしい奴らにも囲まれて身動きが取れなくなる。
今日ずっと感じていた視線の主は、どうやらコイツららしいと、自然に顔が強張る。
「・・・誰だよ、テメエら」
「誰でもいいだろぉ〜?」
男たちがにやにやと笑い合う。
この返答からして、俺はコイツらと初対面らしい。
だが名前は知られている。
「いいから来な。・・・可愛い妹たちに何かあったら困るだろう?」
「なっ・・!」
拳に力が入ったが、その左腕は男に掴まれた。
祭りの会場から離れた薄暗い路地には、もちろん人などいない。
硬質なコンクリートの建物の影に連れて行かれれば、そこにはまだ五人の男がいた。
まずい・・・。
鈍い光を反射させる金属バットが二本視界に入り、ますます体に力が入る。
十対一に加えてバットが二本。
勝てるかどうか・・分からない。
「まぁ、そう固くなるなって」
バットを持つ一人の男が言った。
「班目、一角・・・・呼び出してくんね?」
男のその一言で、全てが分かった。
こいつらの狙いは最初から俺なんかじゃない、と。
俺がこいつらを知らなかったのもそれなら頷ける。
狙いは『班目一角』、学年は三年だが恋次と元々知り合いで、入学して直ぐにダチになった。
血の気が多くて喧嘩好き。
くそっ!
あの野郎・・・自分が買った喧嘩は自分で最後まで処理しろよ・・!
「呼んでくれるだけでいいんだよ、そしたらお前は帰っていいし」
「痛い思いすんのイヤだろ〜?」
その下品な笑いも、人を舐めた態度も、正面からタイマンでくる気のない卑怯な根性も、ムカついた。
「イヤだね」
「だろ?ならさっさと・・」
俺の「イヤ」は、ダチを売ることの拒否だよバカヤロウ!
ガツンッ!
強い音と一緒に男を一人殴り飛ばした。
不意打ちでも、卑怯と言ってくれるな。
なんせこっちはたった一人に武器もなし。
それなら相手を一人でも先に減らさないと辛い。
そいつが持っていたバットがコンクリートに落ちた瞬間、仲間をやられた男たちが一斉に憤怒し声を上げた。
「てめえ黒崎ぃい!」
「ガキがふざけやがってッ!」
体を横にズラして飛び掛ってきた拳を避ける。
拳をかわしながら相手のボディーに右膝蹴りを重く一発入れてやって、
倒れてくるその体を避けながら空いた後頭部にまた重く一発。
そのまま気絶してやがれ。
「てめぇえええ!」
「ぐっ・・!」
鋭い音で風切るバットを左腕で思わず受け止め、痛みに顔が歪む。
それでも左手でそのままバットを掴み、左側へと思いっきり引っ張ってやれば相手の左ボディーが空く。
そしたらそこに手加減なしで蹴りをいれてやれば、そいつの後ろにいた仲間と一緒に吹っ飛んだ。
「ぅわ、いて・・」
左腕が痛みに痺れている。
せっかく奪ったバットも足元にカツンと落ちた。
転がるそれをまた別の男が拾う。
「チッ・・」
これはダメだ。
状況がヤバすぎる。
浴衣は動き辛いし下駄はうまく踏ん張れない(でも下駄底での蹴りはかなり威力がありそうだな・・)。
拳を作りながらも負けを覚悟した所で、その能天気な声は響いてきた。
「見ぃつけたー」
暗い建物の影から、浮かぶように現れた水浅葱の鮮やかな色。
「せ、せんせぇ・・」
呆気にとられて口を出た声が聞こえたのか、先生はニイッと可笑しそうに笑った。
「な、なんだテメー!」
「俺も仲間に入れろ、よ!」
そう言って、突っ掛かってきた男を先生は一発で伸した。
「なっ・・てめ!?」
「オラオラ次いくぞー」
肩を回しながら楽しそうに俺の側まで歩いて、遂には俺を背後へと押しやった。
「ぇ、あ、あの、せん「黙っとけ」
広い背中が、とてつもなく格好良かった。
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