skylineで恋をして
■その15
【グリムジョー・ジャガージャックの場合】
俺の可愛い生徒に〜!なんて柄じゃねえけど、心境はまあ、そんなもん。
影から出てきてしっかりと黒崎の姿を見た時は、正直安心した。
殴られたような外傷は全くなかったし、自分の両足で真っ直ぐに立っている。
ただ、左の腕は変にだらんと弛緩して、遠目でも分かるくらいに小刻みに痙攣していた。
俺の可愛い生徒をッッ!
こん時ばかりは少し思った。
少しな、少し。
「ぇ、あ、あの、せん「黙っとけ」
戸惑う黒崎を構わず後ろへ押しやって、俺が不良共と対峙する形になる。
生徒の喧嘩に先生が乱入、だなんて地元新聞の一面記事になりかねないが・・・しょうがないよな、うん。
「来いよ、クズども」
右手中指でちょいちょいと拱き挑発してやれば、馬鹿は簡単に乗ってくる。
「てっ、てめえこの野郎ぉおおお!」
喧嘩だ喧嘩!
体中の血が騒ぐ。
教師になってからというもの、少し手を焼く生徒を相手にする以外全くこういう機会はなかった。
喧嘩好きとしては、それはやっぱりツライ。
「オラ来い「警察だ!そこで何をしている!」
俺の声に被る凛と響いた声に、不良共は一斉に顔色を変えた。
「やべっ」
「逃げろお!」
ドタバタと倒れた仲間を引き摺って逃げていくそいつらを拳を構えたままに黙って見送りながら、俺は怒りに震えていた。
せっかく、せっかく・・久々に暴れられると思ったのに、邪魔しやがって!
「ウルキオラぁあああ!!」
怒りのままに叫び振り向けば、自分がさっきまでいたその影からやはり、ウルキオラが現れた。
「テメエよくも邪魔しやがって!ふざけるな!」
「ふざけているのはお前だ能無し。本物の警官じゃなかっただけ有難く思え」
ぴゃしゃりと言い放たれた正論に一瞬だけ言葉が詰まるが、コイツ相手に負けたままじゃいられない。
それだけおあずけをくらった様な気分の怒りは凄まじかった。
「今からカッコイイとこだったんだぞ!台無しじゃねえか!」
「教師が暴力沙汰を起こしてどうする」
「ああ?暴力沙汰なんてオーバーなんだよ!んなの正当防衛だろが!」
「・・・お前が喧嘩するのは勝手だが、お前のその勝手に巻き込まれるのはこいつだ」
ウルキオラはそう言って、ちらり目だけを横に動かした。
つられて見て見れば、俺たちの様子をずっと見ていたのか、黒崎が不安そうな顔をしている。
その顔を見た途端に、俺の中で暴れていた怒りは嘘みたいに静かになった。
「高校生の喧嘩で済む話を、お前は暴力事件にでも発展させる気か」
ウルキオラの容赦ないトドメの言葉には、今度こそ何も反論出来なくなった。
子供の喧嘩に大人が関われば、その時は良くても後で修復出来ないほどに取り返しがつかなくなる。
俺は目先の欲求で動こうとした。
自分の生徒を助けるっていうエゴイストな理由掲げて、本当の目的は自分の欲。
「チッ・・」
どうしようもないセンセーだ。
自己嫌悪に不貞腐れた俺をウルキオラは一瞥し、もう興味などないように黒崎の方へと体を向けた。
「一年五組の黒崎一護だな。左腕以外に傷は?」
「ぇ、あ、いえ。他はないです・・」
「そうか」
良かった。
やっぱり傷はあの時確認できた左腕だけだったと、安堵した。
それでも俺がちゃんと目を離さずにいれば、もっと早くここへ来ていれば、なんて思う。
欲に利用しようとしてしまったことも含めて・・・悪かったな、と。
未だ状況が飲み込めずに戸惑った表情のままの可愛い生徒へ、俺は心の中で謝った。
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