コンビニで考える15のお題
1。いらっしゃいませ
ピンポン、と聞き慣れた軽快な音を引き連れて、嫌な客がご来店。
「い・・いらっしゃいませー・・・」
商売用の顔と声を打ち消して対応してやれば、店に入って来たその時からじっとこちらを見ていた客が顔を顰めた。店内を見回るわけでもなく、薄汚れた白ランのポケットに両手を突っ込んだまま一直線に向かってくる。レジに他の客がいないのをいいことに陣取ってきた。はっきり言って迷惑だ。
「お前、今のが客に対する対応かよ」
偉そうに踏ん反り返るその横っ面を、今すぐにぶん殴りたい衝動を抑える。
「“客”なら何か買う物を持ってからレジに来てくださいお客様」
引き攣った笑顔を無理矢理浮かべて言ってやれば、相手の顔も引き攣った。前にはっきり言われたが、こいつは俺の敬語が心底嫌らしい。
「チッ・・」
舌打ちを一つしてようやくレジを離れた背中を内心満足して見ていると、バイト仲間の花太郎が恐る恐るといった風に声を出した。
「グリムジョーさん、相変わらずですねー・・」
俺と同じようにその背を眺めていた目線がこちらに向く。
「余程好きなんですね、一護さんのこと」
他意のない純粋なその言葉が、俺の全身に鳥肌をたたせた。
「っな、な、な?!」
好き?!グリムジョーが俺のことを?!好き?!
ありえねえ!!
「アホかッ!」
罵声とともに平手で頭を思いっきり叩いてやったが、涙目で頭を抑えたまま花太郎は尚も言い募った。
「だって、毎日来るじゃないですか!」
一護さんのシフトの日は、毎日絶対に!
花太郎のその言葉が真実だったせいか、その涙目が妙に熱かったせいか、俺は言葉を詰まらせた。そう、グリムジョーは暇なのか嫌がらせのつもりなのか(多分両方だ)、俺がシフトの日は毎日毎日このコンビニへと足を向ける。こいつの通う学校や自宅からは距離があるコンビニだというのに、俺のシフト時間には絶対に顔を出す。そして俺の仕事上がりまでどこかの忠犬のように待ち続け、暗い夜道を二人で帰る。
「ね、好きなんですよ」
「ね、じゃねえよ」
そののんびりととぼけた顔にムカついて、もう一度強く頭を叩いてやった。