コンビニで考える15のお題
2。こちら温めますか?
ナポリタンに蕎麦、海苔弁一つ、鮭のおにぎりが一つにおかかのおにぎりが二つ、サンドイッチが一つ、ペットボトルの茶が一本、炭酸ジュースが二本、板チョコが二枚。
「お前、コレ・・・・夕飯か?」
「あ?当たり前だろが」
カゴも使わずにどっさりと腕に抱えて持ってきた商品を目の前に置かれ、俺は呆れた。
「いい加減自炊ぐらいしろよ・・」
この坊っちゃんに何言っても無駄だと分かっているが、言わずにはいられない。三食+夜食の全てが、コンビニ或いはファミレスというこの男は不健康の道を突き進んでいる。
「メシなんて作れねえ」
堂々と言い切るその姿は最早見慣れたもので、ここで俺が一つ大きな溜息を吐くのも恒例だ。
「・・温めは?」
「ナポリ」
示されたナポリタンだけを背後の電子レンジへ。他の商品は一つの袋に詰めていく。
「あ。釣りあるか?」
ぴらり、万札を一枚掲げて見せるグリムジョーに目をやることなく、「ああ、あるから大丈夫」とだけ返す。このやり取りも慣れたものだった。グリムジョーは殆んど万札しか持ち歩かない(しかもポケットに突っ込んでるだけ)。
「箸はいるよな。フォークは?」
「いらねー」
全てを袋に詰め終えた所で、タイミングよく背後からピーピーと甲高い機械音が響いた。音に反応して電子レンジの扉を開け、中にあるナポリタンの容器に指先が触れた瞬間。
「あっつ・・!」
温まり過ぎて火傷しそうなほどに熱い容器から、条件反射で手が離れる。
「おい、大丈夫か?!」
レジから身を乗り出してきたグリムジョーに苦笑して、ひらひらと引っ込めた手を振って見せた。
「こういうの偶にあるんだよ。だから慣れてる」
「・・はー」
まだ十分に熱いであろう容器にそろりと手を伸ばし、素早くレジカウンターへと置いた。既に開いた状態にしておいた袋へと入れて、終わり。
「ホラ、釣り」
手早く釣り銭を手に取ったが、グリムジョーは見向きもしない。俺が釣り銭を持つ逆の手を・・正確には指先を見つめたまま、ようやく口を開いた。
「・・・赤くなってんぞ」
スッと静かにグリムジョーの手が伸ばされて、少しささくれて骨張った指に、赤いと指摘された指を摘まれた。やはり軽く火傷していたみたいだ。
「ぁー・・冷やさねぇと」
「だな」
「ま、もう終わりだろ?」
「ん?・・あ、つか時間過ぎてんじゃんかッ」
他に客がいないからと、グリムジョー相手にゆっくりし過ぎてしまった。
「おい釣り!」
「あ」
釣り銭をやっと渡せた俺は、そのままグリムジョーを放って事務所へと入った。慌ただしく店長に挨拶し、コンビニの制服を脱ぎながらレジへと戻る。
「おつかれー」
「おう、お疲れ」
俺より一時間後に終わる花太郎が隣のレジからにこにこと声をかけてくる。
「やっぱり仲良いね」
「まだ言うか」
去り際にぺしんっと頭を叩かれた花太郎は、それでもこの二人が「仲良い」と思わずにはいられないのだった。
「これやる」
帰り支度をした一護を待っていたグリムジョーは、袋の中から一つ長方形の物を取り出してぶっきらぼうに押し付けた。それはさっき買った板チョコのうちの一つで、一護が好んで食べるものだ。
「あ、さんきゅ」
その板チョコを当たり前に受け取った光景を見て、花太郎はやっぱり思った。好きなんだなぁ〜、と。誰が誰を好きなのかは、この際言いっこなしだ。だって二人とも、きっとまだまだ無自覚らしいから。