【拍手お礼。だったもの】
テーマ:四月馬鹿エープリルフール
風の肌寒い屋上に白と黒の点が二つ。
「なぁ、いい加減にしねーとまじ殺すぞテメェ」
「おやおや。名探偵ともあろう者が随分物騒なことをおっしゃる」
青い慧眼には殺気。モノクルと月の影で目元の見えない顔には笑み。
「暗号はいい。むしろ大歓迎してやる」
「それは嬉しいお言葉で」
ただ・・・と続けた探偵の身体が、寒さにではなく怒りに震えた。
「いちいち鳩に送らせてんじゃねーよバーロー!」
軽やかな羽音。愛らしい鳴き声。舞う白の羽根。咥えられた怪盗からの予告状兼お手紙。それは探偵が家で寛いでいるときならまだしも、学校や事件の現場にいるときですらやってくる。おかげで二課の熱血刑事には睨まれるは倫敦帰りの探偵にはしつこく付き纏われるは。
「迷惑だ!」
その言葉に尚も怪盗は笑みを浮かべる。
「迷惑だと言われましても、アレが一番楽しい配達方法ですし」
「楽しいのはお前だけだ!!」
「おや、そうですか?」
心底不思議そうに聞いてくる目の前の怪盗に眩暈を感じて、探偵は深い溜息を吐き出した。落ち着け落ち着けと自分自身の昂ぶった心を静める。この馬鹿のペースに合わせていたらそれこそキリがない。キッと改めて強く睨みつけてやれば、目の前がぼやけた。自分の視界がはっきりしない。惚けた一瞬で唇になにかが触れる感触。
アレ?近い。
焦点がようやく目の前の物体を捉えれば、それは気障な怪盗。濃紺の瞳が見ている。その目にやたら間抜けた顔の探偵。
なんだコレ。
いまいち状況の理解出来ていない探偵を放って、すっと音も立てずに離れた怪盗はにんまり口角を上げた。
「ご馳走様です・・・久しぶりの邂逅、嬉しかったですよ。頑張った甲斐がありました」
「・・・・」
その言葉に、その態度に、やっとカワイソウな探偵の優秀な脳が活動を再開した。わなわなと震えだす身体。真っ赤に染まる顔。
「っ・・・殺す!」
名探偵、工藤新一。この日はじめて、殺人を犯す人の気持ちが心の底から理解できた。
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