「何でッ・・・何で俺なんだよ!!」

聞くつもりはなかった。いつのまにか叫んでた。

「ハッ!」

愉快で歪む顔。あの日、この顔を二度と忘れないと誓った。

「分かってんだろお!一護」

いつも友に言われている眉間の皺が更に深く刻まれる。

「テメェだからだよ!!」

深く刻まれる皺と連動して目が瞑る。
強く閉じた目からは涙が伝った。


―――――分かってるよ、クソ野郎















「人やりならぬ、胸焦るる」















「泣くなよ、一護」

片手を衣嚢につっこんだまま、ニヤニヤと笑いながら一歩一歩近付いてくる。
歩を進めるたびひらひらと袖が揺れる。

左手は?

俺の知らない疵に聞けずにいた。

「泣いてねえ」

斬月を真っすぐ突きつけているにもかかわらず、歩みを止めない。
両手にはもちろん剣は握られてなく、殺気は感じられない。

「剣を下ろせよ、一護。今日は殺しに来たんじゃないんだぜ?」

「黙れ」

「・・・分かってんだろ?」

その言葉に相反する二人の瞳が繋がる。
少し、痛んだ。

「分かってて聞いたんだろ?」

「・・・黙れ」

「テメェだけじゃねえ。それも分かってんだろ?」

分かってる。
一度剣を交えた。その日だけで。
負けを教えられたお前に、それ以上屈辱したこの気持ちを。
全部全部分かっているんだ。

「左手を失って、十刃落ちした。ここまでムカついたのは初めてだ」

気付けば切っ先が胸に付きそうなくらい近くにいた。
俺が一歩踏み出せば。
そう思いながら踏みとどんでいた。

「いきなり何だ?愚痴でも言いに来たのかよ」

「抱き竦められねえ」

不意の言葉に体が一瞬竦む。

「テメェは強情だから、身動き出来ねえくらい抱き竦めねえと」

目線を下げていた俺の目をじっと見つめて無理矢理上げさせる。
情けない顔、悲しそうな顔、笑いをかみしめている顔、困っている顔、泣きそうな顔、嬉しそうな顔、殺したい顔。
全てに見えた。
お前の顔も。俺の顔も。

「繋がらねえと、テメェは認めねえ」



好きだということを



「俺たちは交われねえ」

「だから剣を交えるんだろうが。本能のままに」

「違う、使命を確認するんだ。俺とお前は・・・敵だから」

「俺はもう、本能だけで戦っている。藍染は関係ねえ」

こいつの本能。

「テメェを殺してえ」

歪んだ本能。

「俺のモノにしてえ」

歪んだ愛情。なのだろう。

「何が言いたいのか、何を言いたいのか分からねえよ」

これ以上聞きたくなかったこいつの本能に口を挟む。



「好きだ」



敵の言葉。
本能の言葉。
グリムジョーの言葉だった。
今まで以上に俺を突きつける言葉だった。

「次会う時は、遠くねえ」

閉りゆく扉の中、グリムジョーが告げた最後の言葉。

「・・・次会う時までにはその腕、治しとけ」

閉じ切った闇に向けて、届いたか分からない言葉を告げる。



歪んだ愛情に込められた、真っすぐな気持ちからくる言葉。
予想だにしなかった不意の言葉は、俺の言葉を待たなかった。

出会わなかったら。

そんなこときっと関係ないんだ。



誰のせいでもない。

ただ、自分のせいで。



胸が恋こがれる。