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すれちがいクロスロード +++ 一の巻




中忍試験の時のイザコザを乗り越えて、今やいい飲み仲間となる雰囲気だった頃。珍しく酒に飲まれてしまった俺はあの時のことを思い出し、酔いに任せて言ってしまった。

「俺、今でも貴方のこと、嫌いというか・・・・苦手です」

肴の焼き鳥串を見ながらそう言って、言い終わってから「あれ?何を言ってるんだ俺はっっ」と酔った頭の隅っこで青褪めた。他人から見た俺は残念ながら明らかに酔っ払いのそれで、頭の中は青褪めてても見た目は真っ赤なまま。そして飲んでいる相手に『嫌いというか・・・苦手』発言をされた問題の男は、怖いくらいに無言だ。沈黙に耐え切れず恐る恐る伺うように焼き鳥串から目線を隣の男へと移せば、彼の隻眼はバッチリこちらを見ていた。必然的に合ってしまった目を逸らすのは確実に良くない結果を招く。だからといってこのまま男同士で見詰め合うのも如何なものか。その何を考えているのか分からない片目を、内心で冷や汗かきながら見つめ続けた。時間にしてたった数十秒、されど長く感じる数十秒。終始だんまりだった男はここでようやく口を開いた。

「俺は、貴方のこと・・・」





「今でも 嫌い です」





『嫌い』と言った瞬間の、晴れやかな笑顔。ああ、この人こんな顔もできるんだ・・・なんて思いながら、胸の奥が熱く痛んだ。音にするとキュンッという感じに。その時に俺は、確かにこの人に惚れてしまったんだと思う。笑顔で『嫌い』だと言われて好きになるなんて、まるでマゾだ。自分で自分が可笑しくなって・・その日から、飲みに行くのはパッタリとやめた。今まで俺が誘う側、あっちが誘われる側だったから、当たり前に俺が「今夜一杯どうですか?」と声をかけなければ二人で居酒屋の道はなくなる。タイミングがいいのか悪いのか、任務報告書の受付業務さえ別の仕事が入り一時休みとなった。つまり、会う機会はほぼ皆無。どちらかが相手を探したりしない限りは、多分二ヶ月このままの状態になる。二ヶ月もあれば繋がりかけていた縁も簡単に切れるだろう。そのことに事実ほっと安堵した反面、がっかりと落ち込んだ。

「まぁ、いいけど・・・」

嫌われてるし、どうせ俺なんかじゃどうしようもない相手だし。口布を取った素顔のキレイさは何度見ても慣れそうになかった。ビンゴブックに載るほどの元暗部・現上忍師。ゆったりと落ち着いた、魅力的な声。諦めきった恋に縋るほどの力など26で中忍の俺にはなくって、薄暗い資料室で一人、日の暮れていく様を眺めながら力なく笑った。





―――苦手だと思っていたのは 好き だったからだなんて、今更気付いても遅いよ