宵の壱
なんでこんなことになった?さっきから頭の中はこれだけが渦巻いてる。隣りを歩く男は寡黙。俺との仲は、最悪。でも同じ仲間。でも相性は、最悪。手には酒缶が入ったビニール袋。隣りの男も同じ。
「あんた達、いい加減にしなさいよね」
目を吊り上げて怒っていた仲間の彼女。可愛い顔があの時ばかりは恐ろしく・・・
「握手出来るくらいには仲良くなりなさい!」
雷が落ちたような声と共に、馴染みの店を追い出された。
ああ、そうだ、喧嘩したんだ。今回はかなり派手なヤツ、この男と。殴り合い蹴り合い貶し合い。いっそ殺してやると思うくらいにやり合った。だけど原因は憶えていない(どうせまた、くだらないこと)
「なぁ、どこ行くんだ」
男の声にハッと気付いて足を止めた。見やれば痣やら傷やら付いたひどい顔がこちらを静かに見ていて、ああクソ!家過ぎてんじゃねーか!無言で来た道を少し戻る。後を追ってくるもう一つの足音。
「飲みなさい、二人っきりで」
お金に煩い彼女が押し付けてくれた二千円。有難く使って、これから酒盛り。野郎二人で、なんて、クソ!死んじまえ!古い階段上って二階の扉。開けた後ろで小さく「・・おじゃまします」の礼儀正しい声。ムカ。なんでかムカ。お前、絶対俺らが大喧嘩したこと、忘れてんだろ。タダ酒が飲めることしか頭にないだろ。俺と飲むんだぞ。俺の家で。俺が作ったつまみ食って。分かってんのかよクソ!酒はリビングに置いて、黙ってキッチンに向かう。こんな奴に美味いもんなんか・・とは思ってもプライドがそれを許さない。いつも通り手抜きなんか一切ない料理。でも有り合わせで直ぐに作れる物。皿を持って視線を上げて
「・・・何してんだよ」
「・・・」
戸口にぽつん。酒持ったまま立ちっぱなしで、
「・・・座れよ」
「ん」
なんだ、コイツ。言われてからいそいそと、いつもの定位置戸口直ぐの壁際へ。喧嘩のこと、こいつもちっとは気にしてんのか?と思った直後にぷしゅぅ・・一人で勝手に酒を飲み始める男。死ね。
「・・・・・・・・・・、食え」
「ん」
黙ってつまみをテーブルに置けば、黙ってそれを見つめるばかりで手を出さない。焦れて許可出せばようやく手も口も黙々と動かし始める。なんだ、こいつ。なんだ、コレ。まるでペットの躾してる気分だ。二人黙って、ひたすら酒を飲む。わざと喋らない俺はともかく、こいつはこれほど寡黙だったか?仲間といる時、それこそ幼馴染のルフィといる時なんか、大口開けて笑ったり、さあ。眉間に皺。キッツイ目。俺だけ。俺にだけ、こんなの。いっつも俺にだけで・・・あ、やばい、泣きそう。
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