「ありがとう」を、君に side.lambo
夕方にバッチリと目が覚めて辺りを見渡す。
誰もいない・・・。
家の不気味なほどの静けさが怖く感じた。
「ツナ、まだかな」
大きな瞳いっぱいに涙を溜めて、用もないのに忙しなく動き回る。
「ランボさんは別に、怖いわけじゃないもんねっ」
玄関の目の前で更に動き回り、ただひたすらにツナの帰りを待つ。
―――ギシッ
「ヒッ!?」
突然頭上、二階から物音が聞こえ、ピタリを動きを止めた。
ビクビクとその音の原因に怯えつつも、それと同時にふと記憶の片隅に埋もれていたある事を思い出す。
「そういえば・・・」
そういえば、さっきツナ帰ってきたじゃん。
まだ寝起きで、頭の中がまどろんでいる最中だった為すっかり忘れていた。
ツナがいる、ということはリボーンもいる。
急いで階段を駆け上がり、もう何度の行き慣れたツナの部屋を目指す。
「ガハハハハッ」
いつもの豪快な笑い声と共に、リボーンを殺すべく中へと足を踏み入れた。
「・・・あ、あれ?リボーンは?」
はっきり言って拍子抜けだ。
せっかく来てやったのに、殺したい本人が不在とは。
そしてふと気付く。
いつもなら怒鳴るなり笑うなりの反応を示してくれる面々もいないことに。
そこにいるツナでさえ沈黙している。
「ツナ・・・?寝てるのか?」
ベッドに横たわったままピクリとも動かないツナに、恐る恐る声をかけゆっくりと近づく。
ツナの茶色い、ふわふわとした髪を、いつも彼がしてくれるように撫でてみる。
―――ふわ、ふわ
やはり反応はなかった。
心なし、ツナの顔色が悪いように感じる。
不安に駆られキョロキョロと室内を見回し、何かツナの身体にかける物を探す。
そして部屋の隅にキチンと畳まれ置いてある毛布が一枚、目に留まったのだ。
それは以前、自分がこの部屋で昼寝をしたときに、苦笑しながらもツナがかけてくれた物と同じ毛布だった。
これだ!と、その毛布の上に乗せてあった何かを気にせず、勢い良く引っ張った。
―――ズッ、ゴスッ!
「くぴゃあっ」
リボーンが仕掛けたのか、獄寺が仕掛けたのか。
毛布を引っ張った途端にトラップが発動し、ボーリングの玉ほど大きな鉄球が、ランボに向かって落ちてきた。
球体は見事、鈍い音をたてヒット。
「ガ・マ・ン・・・!」
泣くなと自分に叱咤して、「ガマン」の三文字を呪文のように唱える。
ツナの温かさが欲しい。
いつもなら苦笑しながらも、しっかりと自分を抱き抱えてくれる。
そして頭や背を、優しいあの手で撫でてくれるのに。
痛む身体を起こし、歯を食いしばって毛布片手にツナの元へと向かう。
―――ズル、ズル、ズル、バサァッ!
「ランボさんも一緒に寝ちゃうもんねっ」
ああ、温かい。
ずっと欲しかったツナの温かさ。
「ツナ、おやすみ・・・」
目を覚ましたら、「ありがとう」って言ってくれるかな?
頭を撫でて、笑って、欲しいな。
いつツナが起きても分かるように、ギュッと強く、ツナの服を掴んで。
夢の中、ツナが笑って大好きな飴玉をくれた。
ツナのくれた飴が一番大好き。
そして、ツナの笑っている顔が好き。
「ありがとうっ」
スヤスヤと眠る子供は、幸せそうに微笑んだ。