「ありがとう」を、君に  side.tsuna






今日は珍しく、周囲が静かだった。


今朝からイタリアへ、獄寺君が武器の調達に、リボーンが俺の経過報告に行っている。

リボーンがいないことに嬉しく思いながらも、ちょっと・・・・ちょっとだけ、何だか物足りなかった。
いつの間にかあの喧騒に慣れていた自分が、少し恨めしい。




放課後、言い知れぬ寂しさを紛らわそうと山本に声をかけた。

「あの、今日、遊べない?」

俺からの誘いに山本はあの眩しい笑顔を一瞬浮かべた。
だけどすぐに「あっ」と何かを思い出し、眉を八の字に曲げてしまう。

「悪ぃ、ツナ!今日は店の手伝い頼まれてんだ・・・」

山本は両手を顔の前でパンッを合わせ、再度「悪い!」と勢い良く頭を下げた。

「い、いや!そんなに謝らなくても・・・手伝い、頑張ってねっ」

「おう!」

明るい山本のその顔に、元気を分けて貰えた気がした。



それでも、だ。
それでも家に着く頃には平和な今日一日に、何故だか俺は疲れを感じていた。

フラフラと玄関の扉を開き、重たい声を出す。

「ただいまぁ〜・・・」

「・・・・・」

静寂だけが広がった。
母さんの声が返ってこないことに一瞬頭を捻ったが、町内会の集まりで留守にしていることを思い出し息を吐く。

「お腹空いたな・・・」

この静寂がまるで自分の家じゃないみたいで、何でもいいから音を聞きたくて何ともなしに声を出した。

「疲れたー・・・お腹空いたー・・・」


ゆっくりと階段を上って、自分の部屋の扉を開ける。
そして制服のままベッドへダイブした。

―――ギシッ

スプリングが僅かに軋む。

瞼が自然に下がって、外から聞こえてくる騒めきが居心地良い。


「ガハハハハッ」

あ、ランボ来た。

半分眠った状態でランボの侵入を確認。

「・・・あ、あれ?リボーンは?」

トコトコ小さな足音が聞こえて、すぐ耳元にランボの気配を感じた。

「ツナ・・・?寝てるのか?」

不安げなその声に頭を撫でてやりたいけれど、身体が動かない。



甘えるようにさわさわと俺の髪に軽く触れていたランボの手が離れ、突然部屋の隅へと移動し始めた。


―――ズッ、ゴスッ!

「くぴゃあっ」

あー・・・。何となく、何となくだけど・・・見えない現状が想像出来てしまった。

「ガ・マ・ン・・・!」

遠くから聞こえたあの口癖が笑みを誘う。

そしてしばらくすると、また小さな足音が近寄って来た。

―――ズル、ズル、ズル、バサァッ!

何かを引き摺るような音の後、身体に柔らかい重みが乗る。

「ランボさんも一緒に寝ちゃうもんねっ」

意気込んでいるようで小さな声。
少しずつ俺の隣へと潜り込んで、キュッと制服の裾を掴んだ。

「ツナ、おやすみ・・・」

早くもまどろんだその声が可愛い。


ああ、温かいなぁ・・・そして心がくすぐったい。
ランボが掛けてくれた毛布も、ランボの子供体温も、優しさも。

ゆっくりと夢の淵へ落ちながら思う。

そういえばこんな気持ち、リボーンが来る前は全然なかった。


ギュッと強く、小さな手で握られる裾。

起きたらアメでも買ってあげよう。
ランボの大好きな、ブドウ味の飴玉を。

でも今は、一緒におやすみ・・・。


ありがとう、ランボ。