【拍手お礼。だったもの】
 テーマ:四月馬鹿エープリルフール





その顔はいつか見たのと同じ。思考も感情も見えない酷く穏やかな笑顔。

「こんにちは、ボンゴレ」

語尾にハートでも付きそうなほど軽い調子で、骸は綱吉の前に立っていた。

「ぁ、え・・・?」


なんでコイツ、こんな所にいるの・・・。


部活や補習など、様々な目的で学校に来ていた生徒が帰路へとつく並盛中学校の校門前。例に漏れず綱吉は今日、散々だった数学や英語の補習に来ていたのだが、そこで声をかけてきたのが予想外の人物だった。骸の後ろにはいつもの二人と眼帯を着けた少女もいる。四人は珍しくダークスーツを着こなし、果てには骸のその手には薔薇の花束。目立たない筈がない。生徒の好奇の目が集中する中、綱吉はもうこんな状態には慣れたと言わんばかりに大きく溜息を吐く。

「あっ!幸せ逃げちゃう!」

眼帯の少女の可愛らしい言葉すら敢えてスルー。綱吉は多少睨むような形で目の前の、やけにフローラルな男を見上げた。

「何の用?」

どうせ碌な事じゃないと分かりつつも、綱吉は律儀に聞く。そんな彼の問いを待っていましたとばかりに、骸はニッコリと、嬉しそうに笑んだ。同時に綱吉の後ろから、遠巻きに眺めていた女子生徒からのなにやら黄色い悲鳴。その中にクラスメイトの声を聞いて、綱吉は内心で黄色くはない悲鳴をあげた。明日の女子からの質問攻撃を思って。

「ボンゴレ・・・」

呼び名と共に、すっと恭しく差し出されたそれ。ドラマや映画でしか見ないような量の赤い薔薇。自然と綱吉の眉間に深い皺。そして引きつる口元。

「・・・・・ボンゴレ?」

不思議そうに、更に綱吉の胸元へと差し出される綺麗な花束。


これはアレ?受け取れってこと?俺が薔薇の花束なんかを、受け取れってこと?!


綱吉の心を見透かしたように、骸を含め眼帯の少女までもがニッコリ。

「「さあ、どうぞ」」

高い声と低い声。どちらも今度こそ語尾にハートを付けて、その薔薇は綱吉の手に渡った。

「・・・・・」


これは何?なにかマフィアの祝い事でもあるの?俺に薔薇って何?


フローラル芳しく自分の手に納まってしまった花束を見下げて、尚も渦巻く疑問。

「で・・・何なの?」

重い口を開けば、未だフローラル臭を漂わせる男は笑顔のまま。




「愛しています。お嫁さんに来てください」




凍えそうな空気。押し潰されそうな沈黙。

「・・・頭、大丈夫なの?」

明らかに軽蔑しきった目をチラリ骸に向け、綱吉は側近たちに聞く。一応心配も含んだその言葉をどう消化したのか、意中の骸はあの独特な笑い声をこぼしている。

「失礼なことを・・・」

「うさぎちゃん冗談うまいぴょーん」


いや、冗談はそっちだろ。


顔を顰めた眼鏡の彼と、自身の両手を頭上にやりうさぎの耳を作ってみせたハジケた髪型の彼。眼帯の少女は骸と同じ笑みを浮かべたまま。だけどその片目に意味を含んだ光を見つけ、「あぁ」と思い当たる。そういえば今日は四月一日。世に聞く“エープリルフール”だった。とりあえずコレは、何か返事をしたほうがいいのだろう。真正面からビシバシと感じる期待の眼差しに、綱吉はうんざりと言い放つ。

「悪いけど、そういうの間に合ってるから」

度を超す親愛の類は、獄寺君とかハルとか獄寺君とかハルとか獄寺君とかハルとか・・・ときたま山本。冗談の類は友人居候含め全般的に。

また妙なことを言われる前にと、花束をしっかり抱き、綱吉はまさしく脱兎した。花は貰っておく。でも付属してきた言葉はイリマセン。そのある意味天晴れな背を大人しく見送りながら、骸は「はて?」と首を傾げる。

「反応が少し淡白でしたねぇ・・・本気だったんですが」

遠回しにではなくほぼストレートに振られたにも拘らず、懲りた様子のない骸。その背を眺める側近たちとしては面白ければなんだっていいし、骸様のやることなら何の文句もない。ただ、ただ一つ。今日という日がジャッポネーゼにとって“嘘吐きの日”だということをきっと、六道骸という人間は知らないのだろう。


骸様、ガンバ☆


眼帯の少女だけは知っていたその事実を、他の三人は知らない。知るのはもっと先のはなし。










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