ああ、これが“恋”ってヤツなのか。


今にも死んでしまいそうだと錯覚するほど、胸が熱い。
この複雑な想いを口にできないことの、悔しさと憤り。


“恋”なんて、するもンじゃない・・・。










   
 の か ら 騒 ぎ    bP










昔、姉貴が俺の部屋に置き忘れた恋愛漫画を、ふと思い出す。
好奇心に負け開いたそのページには、男女の淡く切なく、それでいてハッピーな物語が綴られていた。


―――女ってのはどうして、こんなもの読むんだ?

両思いのクセにお互い気付かず傷つけ合って、涙を流す。

気付かない訳ないだろ、相手はこんなにも必死なんだから。
好きなら「好きだ」と一言、簡単に言うだけだろ。

もっともそれは、まだ“恋”を知らないガキだった俺の意見だけど。




「獄寺くんっ」

あの人に名前を呼ばれるたび、ドキッと強く、心臓がリズムを乱す。

「っは、はい!何でしょう、十代目!!」

側に居る最も愛しい存在に、体中が歓喜する。

「学校でダイナマイト使わないでって、いつも言ってるだろ?!」

「ぅ、あ、はいぃ」

浮ついた気持ちは一気に沈んだ。
涙さえ滲んでくる。


(情けない・・・・・・)

自分自身、こんな調子で本当に大丈夫なのか。
こんなんで10代目の右腕をやっていけるのか。
不安で不安で、情けなくて仕方がない。



廊下をトボトボ歩きながら、鬱々と考える。


『獄寺、そんなに煮詰まってるならヤっちまえ


僅かに見覚えのある小さな黒い影が、自分の頭の中でそう囁いた。

「っ、ぎゃぁあー――!!!!!」

咄嗟に頭を抱えて絶叫する。

側を偶々通りかかった不運な生徒は皆、サッと顔を青くして走り逃げた。

「ぃ、嫌だ!」

一瞬でもあんな不埒な発言をした生き物を召喚してしまったこの頭が憎い。
最悪だ最悪だ最悪だ。最低だ!


「あ。お前こんなところで何やってんの?」

・・・・・よりにもよって、だ。
よりにもよってこんな気分のときに声をかけていたのは、大っ嫌いな野球野郎。

「・・・んだテメェ。俺に話しかけんじゃねぇよ」

いつものようにギラッと睨みをきかせる。
だけどこの野郎には全くこの手の類が効かないのか、やっぱり腑抜けた顔のまま変わらない。

「何。牛乳飲むか?」

「っ、はあああああ?!」

何がどうなって「牛乳飲むか?」になるんだ?!
分からねぇえええええ!!

「カルシウム摂れよ。怒ってばかりいるとツナに嫌われるぞ」

「・・・え?」

何、言ってんだ、コイツは。

「あいつ言ってるぜ?『怒ってる獄寺くん、怖い・・・』って、いつも」

「・・・・・・・・・え」

いつも?


『怒ってる獄寺くん、怖い・・・』


十代目が、いつも、そう言ってる?

「・・・う」

「う?」

「ううううう嘘だ!!」

「ハハハッ。いや、マジよ?」

こ、この野郎っ・・・・いったい何がそんなに可笑しい?!
嬉しそうな面しやがって!!

「じゅ、十代目ぇええええええ!」

こいつの言うことなんて1ミクロンも信じられるかああああ!

「あ、オイ」


声を響かせ走り去った獄寺の背に、山本はポツリと呟いた。

「冗談だったんだけどなー・・・」



















若さゆえの暴走と、甘酸っぱい青春。
とりあえずの目標はこの2つで・・・・頑張れごっきゅん!(軽く人事/笑