【拍手お礼。だったもの】
 テーマ:四月馬鹿エープリルフール





大きな物取りなどなく、かといって嫌いなデスクワークばかりが山のように溜まる辛い日々。灰皿には毒のクズカスが溢れ、閉め切られた室内は灰の煙が充満。眉間に刻まれた深い皺はもちろん、休むことなく小刻みに揺すられる片膝の様子から、彼が今どれだけ苛立っているのかが分かる。そんな鬼よりも鬼気迫った威圧感を醸し出している鬼の副長土方の元へ、悪魔が一人。


「土方さん、一旦休んだらどうですかぃ?」

「・・・・・」


目の前の書類に集中し切っている土方の耳に、沖田の声など届くはずもなく。


「・・・・・」

「・・・・・」


「俺を無視するなんてさすが鬼の副長。いい度胸してまさァ土方クソッタレ」


「総悟ォ!」


悪態に途端反応し怒鳴りつけるその声。沖田はニヤリと笑んだ。

「土方さん、いい情報仕入れてきやしたゼ」

その言葉に土方は何か言い知れぬ不安を感じたものの、疲れきっていた心身はとうに仕事を放り出していた。新たな煙草を一本取り出し、聞く体制に入った土方。その様子を見ながら、土方が万事屋の坂田銀時に惚れていることを唯一知っていた沖田は、早速確信に迫る。



「万事屋の旦那、どうやら土方さんに脈ありですぜィ」



ビクッと激しく身体を揺らし、土方は固まった。気にせず沖田は続ける。


「土方さん、ここんとこずっと仕事漬けでしょう?そいつのご褒美と言っちゃあ何ですが、山崎に聞き込みを頼んでたんでさぁ」

「ザキにか?つか俺が仕事漬けなのはお前が毎日毎日サボってるからだろうが!お前の仕事が俺に回ってんだよォォォ!」


疲れた身体に鞭打って、土方はツッコミのため叫ぶ。それを沖田はマイペースに交わし続ける。

「まぁまぁ。で、旦那のことなんですがね」

「まっ・・・・・な、何だよ」

銀時のこととなると途端に大人しく聞く体制を持つ。沖田は笑った。

「旦那は土方さんが・・・」

「な、何だよ・・・」



「土方さんが・・・・・好き、みたいでさァ」



一瞬呆け、だがすぐさま険しく変わるその顔に、おや?っと沖田は小首を傾げる。

馬鹿みてーに喜んで馬鹿見てーに旦那のトコへすっ飛んで行くと予想していたんだが・・・。どうやら真逆の反応でさァ。

それもそのはず。土方は長い付き合いで得ている勘と感覚で、沖田の企みに早々に気付いていた。今日の日付は四月のはじめ。つまり“エープリルフール”といういかにも沖田が好きそうな行事だ。フンッと鼻で笑ったあと、土方は置き去りにしていた仕事へと向き直った。

「妙な遊びしてねーで仕事しろバカヤロー」

「・・・・・?」

そう言う背を見て、しばし考え、沖田は「あ!」と一つ手を叩く。


「そういやァ今日はエープリルフールじゃねぇですか。こりゃいっちょチャイナでも騙して遊びますかねェ」


「・・・は?」

言うなり善は急げと駆け出して行ってしまった沖田の背を見送って、しばしの沈黙のあと土方は屯所中に響く大声を上げた。



「ザキィィィ!!」



「は、はいィィィ?!」

死の呪文はヤメてくださいと定番の台詞を言う暇も余裕もないまま、山崎は事の真相を土方に脅され半分に話し、ひどく慌てた様子の土方がケーキの箱片手に万事屋へと駆け込む様子が市民に見られたのは後の事。










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