何に惚れたって、まずはやっぱり顔じゃない?
恋歌うは語り部なりて。
次に惚れたのはその魂。
冷たいようで煮えたぎった熱さが心地好かった。
次は低くてよく通る声。
それに付属してツッコミのセンス。
打てば響く律儀な反応が堪らなく嬉しい。
強いっていうのももちろん理由に入るけど、どちらかと言うと頭の良さにドキッとした。
公務員だからお金持ってるし、真面目だし、何だかんだ言って優しいし。
んで、やっぱり格好良い。
「どうよ、これって百パー希望なくね?俺の恋って百パー終わりじゃね?」
「てめえの恋なんざ百パーどうでもいいが・・・何故それを俺に言う」
二人仲良くコタツで暖まって、剥きかけの蜜柑を片手に隻眼の男は深く呆れた溜め息を吐き出した。その向かいで赤いちゃんちゃんこまで着込んで防寒バッチリな銀髪の男は、ここまで赤裸々に語った己の恋に「百パーどうでもいい」とまで言われて頬を膨らます。銀髪の男の、背中を丸め、両手両足コタツに突っ込んで、顎を机上に乗せて、大の大人がするには幼い子供のような格好は妙に似合っていた。
「だってバカ本は宇宙のどっかだしさ〜」
「もう一人適任そうなのがいるだろ・・」
「あー駄目ダメ。ヅラは根本的に話になんない」
宇宙を飛び回り連絡の取れない旧友はどうしようもなく、真面目過ぎる長髪の旧友は恋愛の根本理由でまず食い違うだろう。
なんせ恋した自分も相手も男で、それはあってはならない茨道。
そして相手の男は警官で、長髪の旧友は現役指名手配犯のテロリスト。
只今熱烈交戦中、敵同士である。
「猛烈に反対されて猛烈に邪魔されるに決まってる。ヅラなら本気でやる」
その光景をリアルに想像してぐったりとした彼の口に、几帳面にも綺麗に剥いた蜜柑の一欠片を放り込んでやって隻眼の旧友もぐったりした。両手は次の蜜柑を剥き初めて、ふわふわした銀髪のつむじを見下ろす。
だからって、何故よりにもよって俺なんだ・・・。
とは、もう口にしなくても分かってしまって嫌だった。
「高杉ならさ・・・反対も邪魔もしないでしょ?」
これまた妙に似合った上目遣いで媚びるように言われて、納得したくなくても頷かずにはいられなかった。
だって自分は、このぐうたらな銀髪が好きだ。
それは崇拝にも似た友愛であり、決して恋愛にはならない。白夜叉であった昔の彼は本当に綺麗でキレイで、儚く、護りたかった。文句は言えど今の彼だって十分にその美しさは失われておらず、眩しい。自分自身、剥いた蜜柑を口までせっせと運んでやってる時点で過保護通り越して末期だと自覚している。俺に甘えるコイツも甘やかす俺も、それが全て限りなく無意識だから怖い。つい最近本気で殺し合い完全に決別したと思っていたのに、何故か俺もコイツも旧友も、何事もなかったようにこうして会って話をしている始末だし。
「ね、ね、今日泊まってっていい?ウチ誰もいないんだよね」
にこりと無邪気に笑んで、コイツは自分の想い人の敵である現役指名手配犯過激派テロリストのアジトへの宿泊を要望した。