アレでよけりゃあ、いつでも差し上げまさァ。





歌うは語り部なりて。





市中見回りという立派な仕事中であろうに、ぶらり、茶屋で一人団子を齧っていた銀の髪を目敏く見つけて彼はいつの間にか隣に座り込みまったりと茶を飲んでいた。銀髪の分の追加の団子を頼み済みな辺りは、さすが・・としか言いようがない。

「アレのどこがいいんだか、全く理解出来ませんがねェ・・」

「え、ちょ・・何の話かね?総一郎くん」

「総悟でさァ。・・・旦那、嘘を吐くのが下手ですねィ」

ニヤリ。わざと意地悪な笑みを浮かべてみせるこの少年の、新しいオモチャを見つけたと言わんばかりに輝いた瞳はなんだろうか。このままドSな彼の口から悪戯に自分の恋心が相手にと知られてしまうのだけは、どうしても勘弁してもらいたい。

ばっかだな〜そんなん嘘に決まってんじゃーん!

なんて笑いにすり変えられるほど、今回はふざけられない。本気なのだ。本当に、自分は今、恋をしているのだ。相手が目の前に来れば余裕なんて宇宙の彼方へ消し飛ぶ。

「か、勘弁してください・・・」

動揺を隠せずに彷徨う視線をちらりと向けて、奢りの団子片手に銀髪は本当に困った笑みを浮かべた。それは初めて見た顔で、いつも飄々と余裕な彼には珍しい。想い人であろう先輩を前にしたその姿だって、少し年上の余裕で溢れた顔をしているのに・・

「旦那ァ、土方さんのどこがいいんです?」

「どこもかしこも」

困った顔から一転、ふわりと柔かく微笑してそれだけを言った彼を見て、こちらが恥ずかしく思えた。

「惚気ないでくだせェ」

「はは、惚気だなんてとんでもない」

恥かしさを隠そうと咄嗟に茶化した一言に、銀の髪を揺らして彼は笑った。視線を逸らして天を見上げたその赤い目。一瞬だけ見えたそれにどこか、諦めた色を見つけて思わず言葉を失う。

諦めて、るんですかィ?

たった一言。それさえ問えないのは、彼が何もないように幸せに笑っているからだろうか。目の前にある恋する笑顔には幸せだけが伺えて、そういえば、先に進む気がないように見える。
このままでいい、このままが幸せ。
そこで、止まっている。

「旦那・・・」

「ん?なに?」

告白する気は、ないんですか?

俺に聞けるわけがない。