せんせえ、すきです。





あのひどく可愛い告白から数週間。
俺は告白してきた張本人とは一度も会うことなく、長い夏休み中にたった一日だけの登校日を迎えた。

久しぶりに全校生徒を収めた学校は何処も彼処も騒がしい。これから配布するプリントを団扇代わりにパタパタ扇げば微かに涼しさを得られるが、家のクーラーや扇風機の威力には敵わない。暑い暑い暑い。暑すぎる。登校日なんか作るなコノヤローなんて、生徒のようなことを思った。


「先生、おはようございます」


そうやってあの落ち着いた低い声で声をかけられたのが今朝、ついさっき。久々の登校中、告白の張本人は道の隅っこに座り込んで俺を待っていた。

「ひ、土方くん・・・・・ストーカー?」

そう言ってしまったのも無理はないと思う。現に彼も一瞬ムッと顔を顰めたものの、次には渋々ながらその言葉を認めた。

「まぁ、そんな感じです」

「いや、認めちゃダメでしょ。そこは否定しようよ人間として!」

どうしようこの子の将来マジ不安。てかこの子『警察官』目指してなかったっけ?警官目指す子がストーカーって何やってんのよオイ・・・。

「好きだから、しょうがないです」

全国のストーカーを擁護するようなこと言ってるぅぅぅ!ダメェェェ!

「ストーカーは犯罪ぃぃぃ!!」

「・・・すんません」

その謝罪すら渋々言っているように見える。
味覚以外はマトモ・・むしろ優秀な生徒の筈なのに・・・。

「そ、それで・・・どうしたの?」

溜息といっしょに言葉を吐き出した。登校日で早起きしたってだけで疲れるのに、学校行く前からドッと疲れが溜まった気分。早く学校行きたいなんて思ったの、これが初めてだ。促された土方は俺の目を真っ直ぐに見て話し始めた。

「先生、俺が言ったこと覚えてますよね」

「ぇ、うん・・」

「俺、夏休み明けまで待ちます」

「・・・は?」

「待ちますから・・」

それまで強かった眼が、縋るような弱い眼に変わった。

「真剣に。ちゃんと真剣に、俺のこと考えてください」

「・・・っ」

言葉が出なかった。適当にかわそうだとか、何とかなるだとか。そう考えていた大人の汚い部分を見抜いたうえで釘を刺すように言われたその言葉が、胸に刺さった気がした。ズキッ。胸が、イタイ。

「・・・お願いします」

何も言わない俺を置いて、土方は一度深く頭を下げてから背を向け駆け出した。朝日を浴びた白いワイシャツの背中が眩しくて、目に入れていられなくて、俺は下を向いた。





せんせえ、すきです。





ああ、
なんて
眩しい
君の
白さだろう。