せんせえ、すきです。
俺も、好きだよ。
「ぅ、え・・?」
これ以上ないほどにその黒い目を見開いて瞳孔いっぱいに俺を映した土方は、片腕に抱えている黒布に包んだ相棒の竹刀をズルリと地面に落とした。汚れるんじゃないかと俺は気になったがどうやら目の前の生徒はそれどころじゃないらしく、普段のクールさは何処にやったのか酷くうろたえた顔だ。そこへ俺は追い討ちをかける様に、もう一度先程の言葉を口にした。
「俺も、好きだよ」
保健室から生徒たちとガヤガヤ退散して、直ぐにHRをした。ニヤつく例の三人組をなんとか教室から追い払って、自分は大人しく職員室へ。減っていた腹は神楽の酢昆布と沖田の菓子パンで何とかなっていて、今この自分が出来ることは、日誌のチェックと・・・出待ちだった。
「え、あ・・ぇ、え・・・」
日もすっかり暮れた午後八時過ぎ。小さな明かりの灯る街灯の下で、俺は部活帰りの土方を捕まえた。いつだか彼が、早朝に俺を待ち伏せていたように、ちょこんと座り込んで。
そして現れた彼へ、コクハク。
「・・・・・冗談、じゃ「本気だよ」・・ぅあ」
ようやく落ち着いたのか、俺の言葉を噛み砕いてから不安そうに土方が呟いた言葉を即座に否定した。すると小さな照明の下でも分かるほどに土方の顔が真っ赤に染まって、その体に力が入ったのも分かる。
「土方くん、俺も、好きだよ」
街灯から一歩離れて、土方に一歩近付いて。夜でも変わらずに暑さの感じる中で、俺は可愛い生徒に抱き締められた。防具の革臭さと、汗のにおい。全身で分かる熱い身体と、抱き締められる強い力。土方の背後に無残にも散らばった竹刀や鞄が、彼の必死さを見事に形に表しているようで何だか可笑しい。自分の両腕が自然に彼の背中へ回っていたことも可笑しく感じられて・・・だけども、何処か別の所から湧き上がってくる気持ちに揺り動かされて、自然と笑っている自分がそこにいた。
せんせえ、すきです。
おれも、すきだよ。
ああ、
なんて幸せ過ぎる、
このひとときだろう。