大好きと、何度思ったかなんて考えるだけ馬鹿らしいよね。

高校で初めて会って、初対面のその日から喧嘩ばかりの毎日。たまの協力が楽しくて、いつの間にか拳使った喧嘩でさえ心が躍った。睨み合う時のギラついた目と、ふとした瞬間に見せる優しい目。てめーなんざ嫌いだって言うくせに、助けてーって泣きつけば絶対に助けてくれる。世間で言うところの所謂ギャップってやつに弱いのは、どうやら女だけじゃないらしい。普段から女の熱い目線を集める整った顔が、生真面目に授業を受けて黒板に向いてしまっているのが勿体無い。こっち見てよ、なんて、気持ち悪いなぁこの乙女心!





 恋 愛  Symphony





知らぬは本人ばかり也、というやつで。いつのまにか俺の恋心はみんなに知られていた。やだなぁ、俺、そんなに分かりやすかったかな?でも気付いてないのが惚れられてる本人だけってのも、なんだか不思議。鈍感過ぎじゃね?まあ、普通は男に、それも恋愛的意味合いで好かれてる、なーんて、思わないか。俺だって思わないよ。つか、そんなの気持ち悪いし。・・・・・うーん。自分の思考に自分が一番傷付いちゃったぜコノヤロー。胸がズキズキ。でも、あいつを見ればドキドキ。うわ気持ち悪っ!!

「銀ちゃん、告白はしないの?」

純粋にそう聞いてきた後輩の青い目が眩しい。野郎から野郎への愛の告白を、なぜかみんなは鬱陶しいほどに薦めてくる。なんなんですか、皆さん。確かにお前ら全員見事に奇人変人だと思ってたけど、一般常識をぶっちぎりで無視しちゃうまでとは知らなかったですよ?

「あのね、俺たちはね、男の子同士なんですよ?」

「お前らの股間に汚いモンがぶら下がってる事ぐらい知ってるヨ」

「ちょっと、神楽ちゃん・・」

相変わらず辛辣なお言葉で・・・遠慮なくグサッときたよ。うん、そうなんだよね。シモな話で言ってしまえば、お互い自分のモンだけで十分だ!っつーモンがあるんだよね。ああ、ホント、なんで俺かあいつ、どっちかがメスじゃなかったんだろう・・。考えるだけ無駄だってこと、分かってるんだけど。考えないわけにはいかないくらい、俺ってあいつの事が好きで好きで堪らないみたいだ。苦しいなー。辛いなー。どう足掻いたって報われない恋。だけど。この気持ちに気付いてしまう前の自分に戻りたい・・・とは、不思議と思わない。

「ちょうどいい時期だし、告白はやっぱりバレンタインデーよね」

「みっともなく困惑する土方さんが見れるんなら、いつでもいいでさぁ」

周囲が勝手に進めていく俺の告白話。張本人である俺は完璧に蚊帳の外で、反論すら許されず、疑問符だけが頭を踊る。なんでお前ら拒絶しないわけ?なんでお前ら嬉しそうなの?普通は気持ち悪いって思って止めるべきじゃない?拒絶されることなく受け入れられた俺の想い。こんなの、嬉しくないわけない。すっげぇ嬉しい。軽口でもみんな本気で考えてくれてるって分かる。

「・・・くそぉ、まじ告白かよ」

「あったり前ネ!」

ニコニコ笑うみんなの様子を見ていると、どうやら当たって砕けろ!な精神じゃないみたいだけど・・・。でもさ、やっぱり、無理だと思うんだ。見てたから分かる。あいつがどんな反応するか、どんな答え返すのか。誰よりも真面目な性格だから、きっと返事はちゃんとくれる。俺を傷つけないよう言葉を選んで。それで、きっと・・・・・もう戻れなくなるんだ。見えないけど確かに分かる溝が出来て、そのまま。俺たちはお互い、変なとこ不器用だから、修復なんて出来ないまま。

バレンタインデーはもう直ぐやってくる。

わざわざコンビニで買ったバレンタインのチョコを自分で食べて、綺麗に剥いた包装紙は自分で作ったチョコに覆わせた。これで見た目は、コンビニで売ってるようなありきたりなチョコレート。どう見たってそんなの義理。でも、中身は、俺らしくもなく頑張っちゃったよ。

これを渡せば、終わり。

それまで俺はいままで通り、お前の隣りで馬鹿みたいに笑って、馬鹿みたいに心臓バクバクさせていたい。

「銀ちゃん、大丈夫ヨ」

「頑張ってくださいね、銀さん」

ああ、せめて最後は、自分の両足で踏ん張って立っていたい。