募る想いのその先は
覚悟なんてとうに出来ていた。
あの時。誰よりも優しい目をしていたのを覚えている。酒飲み仲間だった店主の依頼は、最近来る乱暴な客の成敗で、俺は無駄な客をとる必要などなかった。それなのに、人手がないと頼み込まれて最後に相手をしたのが、アイツだった。
男は俺より若かった。だけれど今まで来たどの客よりも誇りと自信を持ち、優しかった。このご時世で刀を握り続ける無骨な手は一切こちらへと伸びてこなかったし、語る言葉数も少なかった。
どうしてそんな、優しい目をしているんだろう。
どうしてそんな、幸せそうに笑えるんだろう。
どうして、
どうして、
そんな、
愛おしそうに俺を見る・・?
酒を持つ手が何度も震えそうになった。女の真似でしかない声がだんだんと出せなくなる。偽り着飾った今の自分が、ふと唐突に、とても恥かしく思えてしまった。仕事なのに。こんな仕事は何度もやってきた。それなのに、男の視線に身が焼かれる。今すぐに“白菊”を殺してしまいたい衝動が湧き上がっては消える。
この居心地のいい空間を手放したくなかった。
でも、
“白菊”はもういない。
なあな、運命って信じるか?
口に出して言っちまうと、そりゃ陳腐な言葉だけど。俺はな、信じてる。正確には最近になって信じるようになったというか、信じざるをえない状況に心を動かされたというか・・・。とにかく、俺は運命を信じてる。ただの偶然でも構わないさ。だが俺たちはまた出会った。仲間でも友達でもないけれど、今や俺たちの間にはしっかりとした繋がりだってある。
運命、だったんじゃない?
二度目に会ったあの時、真っ直ぐな剣先と真っ直ぐな目はガツンと俺を貫いた。そしてその目の奥で、動揺するお前が見えてしまった。ああ、分かるんだ。俺が誰なのか、こいつは分かるんだ。俺を、“白菊”を、まだ忘れてはいなかったんだ。身体中が歓喜で震えた。
運命だよ、やっぱり。
会うたび会うたび、目の奥に動揺が見えた。一瞬一瞬無意識に俺を見る目が優しさを含む。忘れようとしたって無駄なんだよ。だってこれ、運命なんだし。もう決まってたんだよ。こじつけでも何でもいい。開き直ってしまえば後は簡単なことなのに・・・・・この、ヘタレ。早くしろよ。俺がいつまでも大人しく待ってるだなんて思ってんじゃねえぞコノヤロー。
「ねぇ、土方くん、知ってた?」
知ってるよね?もう受け入れちゃいなさいよ。これ、運命なんだから。
「俺たち、前にも会ったことあるんだよ」
さあさ、
追いかけておいで。
これも運命なんだから。
想ってるだけじゃ何にも始まらないよ!