激情的メランコリック
闇があると知っていた。
笑顔と光に満ち溢れたなかで、その根底には確かな闇があると。
ただ、俺だけが気付いていた。
「あ。バクラだ」
ポカンと阿呆な顔で、奴は教科書片手に俺を見た。
汚れのない新品同然のその教科書は、確か宿主サマのもん。
「獏良は?」
「・・寝てる」
正直、こいつは苦手だ。
調子が狂う。
「そか。じゃ、コレ返しとくな」
当たり前に渡される宿主サマのもの。
「俺様に返すな」
無駄だと思いながらも抵抗を。
「いいじゃん」
たった一言で一蹴されて、教科書は俺の手に。
これが他のお仲間たちなら・・考えるだけ馬鹿らしい。
俺が表に出ている時点でいい顔はしない。
好き好んで話たりもしない。
それがないのはこの男だけ・・・だから調子が狂う。
「あーあ、俺も寝っかなー」
隣りで大きく伸びをするその金髪。
白いワイシャツに隠れるように酷い痣がちらりと見えた。
また、か。
無言で席を立つ。
「あ、」
外を見ていた奴が慌てたように追ってくる。
「バクラ、サボんの?」
後ろからクイと袖を引かれて、俺は振り返りも立ち止まりもせず低く声を出す。
「屋上」
暗にサボるという意味のそれを聞き取って、隣りに並んだ金髪は太陽みたいな笑みを零した。
「んじゃ俺も!」
「好きにしろ」
調子が狂う。
思わず溜息を吐き出した。
それでも俺は、もう何度目になるか分からない屋上への階段を上る。
こいつにわざわざ付き合って、宿主サマに怒られると分かってても授業サボって。
こいつが行きたい場所に、一人は淋しいだろうと一緒にいてやって。
「なにしてんだ、俺様・・」
天下の盗賊王が、なにしてんだか・・。
「ほらバクラ!急げ!」
鳴り出したチャイムの音に慌てて走りだすその背中が、揺れる金髪が、可笑しい。
こんなことやってるような仲じゃねえのにな。
思っても、足は奴の背中を追って走り出す。
とりあえず今は・・・俺だけが知ってればいい、か。
光も、闇も。